一般演題
中性透析液の臨床評価
演者:大野 卓志 (長寿クリニック)
長寿クリニック1)、近畿大学医学部堺病院腎・透析科2) 大野卓志1)、高橋計行1)、吉本 忍1)、今田聰雄2)
(目的)CAPD療法の長期継続を困難にしている重大な合併症の1つに腹膜機能の低下がある。その原因として非生理的要素の多い腹膜透析液を腹膜に反復して暴露していることも大きな要因と考えられる。そこで、腹膜傷害の原因の一つである低pHに注目して、透析液を酸性から中性に変更して生体適合性を検討した。
(対象と方法)酸性透析液からから中性透析液に変更した維持CAPD患者8名を対象とした。透析液変更前および変更後12カ月までの夜間貯留腹膜透析液中のCA125、ヒアルロン酸(HA)、3-DG、pentosidine、および血清中の3-DG、pentosidineを測定した。
(結果)透析液変更後、注排液時の違和感の消失や掻痒感の改善された例がみられた。透析液変更6か月の時点で透析排液中のCA125は10.6±5.2U/mlから22.4±9.7U/ml、HAは368.9±183.7ng/mlから221.4±138.5ng/ml、血清中の3-DGは122.8±40.6ng/mlから46.8±16.9ng/ml、pentosidineは0.74±0.19μg/mlから0.48±0.11μg/mlへと各々有意な変化を示した。
(考察)中性透析液は従来の酸性透析液と比較して、酸性液で出現した症状の消失を始めとして、腹膜傷害性も低く、酸性液よりは生体適合性の高い透析液であると考えられた。
一般演題
中性化PD液変更による効果について
演者:伊丹儀友 (日鋼記念病院 腎センター)
日鋼記念病院腎センター1) 外科2)、札幌北クリニック3) 伊丹儀友 1)、高田譲二1)2)、浜田弘己1)2)、勝木良雄1)2) 辻寧重1)2)、大平整爾 3)
従来の酸性PD液から中性液に変更後除水量の増加をみた症例の経過を報告する。
症例1、56歳女性。透析歴4年。2000年2月にペリトリックLからミドペリックLへ変更。変更後1ヶ月平均除水量が1343mlから1506mlへ増加した(p<0.0001)。1年11ヵ月後1日2L2.5%4回からに2L1.5%1回2.5%3回交換となった。
症例2 42歳女性。透析歴 9年。2000年2月にペリトリックLからミドペリックLへ変更。1ヶ月後に血圧低下と立ち眩みを訴え、変更後平均除水量は1238mlから1481mlへ増加した(p<0.002)。3ヵ月後ミドペリックL1日2L2.5%4回から2L1.5%1回2L2.5%3回交換となった。
症例3 52歳男性。透析6年。2000年7月ダイアニールからミドペリックLへ変更。
変更後平均除水量1500mlから2037mlへ増加(p<0.001)1.5ヵ月後1日2L2.5%1回2L1.5%3回交換から2L1.5%4回交換となった。
3症例にて現在も除水量を維持でき、2.5%糖濃度PD液使用回数を減少できている。北海道内の他施設アンケート調査でもミドペリックL変更後に1日200ml以上除水量が増加した症例は変更後6ヶ月の時点で13例中5例(38.5%)を認めた。
結果:中性化PD液変更後早期より除水量が増加し、持続する症例があった。症例によってはPD液による糖負荷減少も可能だった。
一般演題
CAPDが在宅医療の支援を可能にできるか?
演者:笠原正登 (神戸市立中央市民病院 腎臓内科)
神戸市立中央市民病院・腎臓内科 笠原正登、吉本明弘、鈴木隆夫
透析患者の高齢化はその病態管理の難しさだけではなく、患者を支える周囲の理解と努力が必要となり、現在社会的な問題となっている。血液透析は透析医療の96%を占める。これは多いのか、適正なのか。高齢化に伴う運動機能の低下は患者に入院透析を強制することが多い。我々は腹膜透析を導入することによりこれらの患者に在宅医療の可能性を提供できないかどうかを探ってきた。腹膜透析の長所は、血圧変動が少なく、在宅でできるという事である。しかし、腹膜透析の経験を持つ医師や医療従事者が少なく、腹膜透析そのものの拡大に歯止めがかかっている。
我々は、透析そのものを経験していない実地開業医に腹膜透析の勉強会を開き、透析管理や腹膜透析そのもののレベル向上を計った。さらに各診療所で発生する腎不全患者の保存期腎不全教育入院や透析教育入院などを展開した。また、腹膜透析の導入に際してはSMAP法なども積極的に取り入れ、留置期間に患者、家族などに十分な教育を実施した。さらに腹膜透析開始し、コンディショニング後に紹介元の診療所に紹介した後も定期的に外来管理して医療レベルの向上を計った。その結果、当院への紹介をきっかけとした90歳を超える腹膜透析患者のフォローが可能となった。
一般演題
腹膜透析離脱後家庭透析に移行した2症例について
演者:坂口美佳 (近畿大学医学部附属病院 血液腎臓膠原病内科)
近畿大学付属病院血液腎臓膠原病内科 坂口美佳、松岡稔明、松尾晃樹、内木義人、長谷川廣文
近畿大学付属病院人工透析室 今村美生、李 京子、林みのり、林 明子
長寿クリニック 中尾 、吉本 忍
(目的)腹膜透析は、腹膜劣化や被嚢性腹膜硬化症への進行回避のために8〜10年で血液透析への移行を余儀なくされているのが現状である。しかしながら自己管理やQOLを重視した腹膜透析から通院透析への移行は、患者自身の受け入れが困難なことも多い。今回我々は長期腹膜透析後に家庭透析へ移行した2症例を経験したので、QOLアンケート調査と合わせて報告する。
(症例)症例1: 58歳男性。平成4年9月腎炎由来の慢性腎不全に対し腹膜透析開始。腹膜炎の既往はなかったが、約8年で除水能低下を理由に中止を決定した。離脱後の透析方法について家庭透析に関心を示したこと、受診時必ず妻が同席するほど熱心であったことから導入を決定した。
症例2:60歳男性。平成3年1月腎炎由来の慢性腎不全に対し腹膜透析導入。一度腹膜炎を発症したが、その後は順調に経過していた。
導入後11年6ヶ月と長期になり、被嚢性腹膜硬化症が懸念され離脱を決定した。自己管理能力だけでなく妻が協力的で熱心であったこと、通院による施設透析に抵抗感があったことなどから家庭透析導入となった。 2症例とも家庭透析移行後も順調に経過しており、またCAPD施行時とほぼ同等のQOLを得ることができている。
(考察)腹膜透析期間中に得られた自己管理能力や、家庭での治療という概念をそのまま活かすことができる家庭透析は、腹膜透析離脱を余儀なくされた症例に適正かつ有用な治療法であると考えられた。
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