日本在宅透析支援会議


教育講演
在宅医療に対する専門医からの提言
演者:中元秀友(所沢腎クリニック)
中元秀友 先生
 本邦の透析患者数は24万人となり、世界一の透析大国となっている。近年の透析導入患者は高齢者、糖尿病の増加、それに伴う合併症の増加が特徴であり、このような患者に対して在宅透析を含めた在宅医療が基本となる。しかし本邦では腹膜透析を含め在宅透析患者数は全く増加していない。その理由に関して多くの意見があるが、臨床の立場でまず直面する問題として医療費の問題がある。保険には通常の医療保険と、2000年の4月より開始されこの4月で5年目を迎える介護保険がある。高齢者の透析患者ではこの両方の保険に関与している患者が多数いるが、この保険診療の面から問題点を検討してみた。

 まず腹膜透析患者の増加しない理由として、介護保険を利用している高齢者では老健、特養、療養型(介護保険適応三病棟)に入院した場合腹膜透析に関する指導管理料が取れず、また介助に対する報酬もなく収益性がないどころかマイナスになることがあげられる。一方血液透析は重度療養管理算定条件になっており、加算が認められている。このように保険上あきらかに不利な腹膜透析は高齢者の導入では当然嫌われてしまう。これは腹膜透析が在宅医療を前提とするため、入院を考慮していないためなのかもしれない。これからの高齢者の透析医療はあくまで在宅を中心に考えるべきであり、腹膜透析は高齢者に適した透析方法である。しかし高齢者透析患者では、在宅を前提に治療計画を組んでいても、合併症などで容易に入院となるケースがある。このようなケースでは結局受け入れ施設がなく、施設間での押し付けあいとなり腹膜透析の普及をさまたげる大きな原因となる。腹膜透析に対しても、血液透析と同様に重度療養管理算定を認めることで腹膜透析は大きく普及するものと思われる。

 また一般病棟への入院時にも交換キット(一日2000円以上)などの資材料が認められていないため、これらは病院側の負担となる。また、導入時のカテーテル挿入手術は開腹手術であるにも関わらず処置あつかいとなり、わずか1300点の算定しかない。当然手術は腰椎麻酔、あるいは全身麻酔となり、リスクはシャント手術よりも高いにも関わらずである。また糖尿病などでは認められている教育に対する報酬も認められていない。これはDPCの場合も同様である。このように入院時の診療報酬に関して腹膜透析は非常に低い算定しかなされていないために、人件費等を考えた場合には明らかにマイナスとなる。そのために病院側でも収益性の面を考えて導入できないケースが多々ある。その他にも在宅透析患者のエリスロポイエチンの適応などの問題など、多くの保険上の問題がある。

 今回は、実際に臨床に直面している腎臓専門医の立場から、具体的な例を上げ保険上の問題点に関する提言をさせて頂く予定である。




特別講演
在宅医療に対する厚生労働省の立場と考え方
演者:中村健二(厚生労働省保険局医療課)
中村健二 先生
 医療を取り巻く環境をみると, 急速な少子高齢化, 低迷する経済状況, 医療技術の進歩, 国民の意識の変化が, おおきな動きとしてある. この変化に対応するためには, 医療制度を構成する全てのシステムの転換が求められており, 医療提供体制の改革, 診療報酬体系の改革, 医療保険制度の改革が必要となっている.

 我が国の医療制度の課題については, 医療提供体制をみると, 病床数が多いこと, 医療従事者が少ないこと, 平均在院日数が長いこと, 機能分化が進んでいないことから効率化 ,重点化の不足が指摘されている. また, 医療情報について比較可能で客観的な情報が不足しているため, 競争が働きにくい医療提供体制と指摘されている. さらに, 医療安全, 小児救急などの救急医療の確保など安心できる医療の確保や, IT化, 標準化, 医業経営の近代化など, 情報基盤などの近代化が課題となっている.

 このため患者の視点の重視, 質が高く効率的な医療の提供, 医療の基盤整備を改革の基本的な視点として, これらの課題への取り組みを始めている

 これらの取り組みの中で、在宅透析など在宅医療がどのように位置づけられているかについて概説する。





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