ランチョンセミナー
『透析スタッフ・透析患者さんが知っておきたい感染症心得』
演者:矢野 邦夫(県西部浜松医療センター 感染症科)
透析患者は免疫不全状態であると同時に、様々な感染症に罹患する危険性が極めて高い医療行為下にあります。また、免疫不全のない人々が罹患しても重大な合併症を呈さないような病原体であっても、透析患者が感染すれば生命の危険が発生することもあります。このようなことから、透析患者の感染予防は極めて重要といえます。
最も重要な感染予防は「手洗い」であり、次に大切なことはインフルエンザワクチンやB型肝炎ワクチンなどの「ワクチン接種」です。このような感染予防は極めて大切であるにも拘わらず、実際にこれらを十分におこなっている透析患者は数少ないのではないでしょうか?それは、それぞれの感染予防策がどのように有効であるのか、どうして必要なのかの根拠が十分に示されていないからと思います。
最近は入院期間短縮が加速されており、以前ならば入院していたであろう患者が外来通院するようになってきました。こういった患者のなかには、免疫不全の方々も当然のことながら含まれています。そのため、院内感染対策が通院患者にも拡大されるようになってきました。入院患者ばかりでなく外来患者にも感染予防を充実させることは極めて大切です。しかし、意味のない無駄な感染対策をどんなにおこなっても患者を感染症から守ることはできません。有効な感染予防を実践するためには、それが科学的なものでなくてはならないのです。すなわち、「根拠に基づいた感染対策」が大変重要といえます。
米国疾病管理センター(CDC)は数多くのガイドラインを公開しており、それらは莫大な数のエビデンス(根拠)に基づいて作成されています。セミナーではCDCガイドラインのなかから、透析患者の感染予防に役立つ勧告をエビデンスとともに紹介したいと思います。
ランチョンセミナー
在宅透析者(医師)からの提言 -在宅透析を選択肢に加えるために-
演者:西海長平(西海医院)
私は21年前より外科医院を開業し、18年前より透析生活に入った。直後より、妻に穿刺してもらい自宅で透析している。他の透析者への透析は一切していない。
現在、在宅透析に対しては介助者の有無、家庭環境、セルフコントロールする強い意思とかハードルはあるが決してそれはそんなに高いものではない。又、在宅透析用の医療機器も開発改良が進められている。バックアップ体制とか、医療制度の問題とか解決しなければならない問題は存在するがーーーー。 私が始めたころは当然保険も認められておらずすべて自己負担で行っていた。数年前から在宅透析は保険診療が認められているにもかかわらず在宅透析者は全国で約100人位しかいない。
18年前私が開業医を続けるためには自宅での透析しか考えられず当然のこととして在宅透析に踏み切った。当初より透析医療に対しては特別難しいとか危険だとは思わなかった。主治医はじめ関係の皆様の協力にて非常にスムーズに開始できたと思う。
透析者の生活の質を確保し、社会生活を維持するために在宅透析がもっと選択されるべきと思うが現実はそうではない。その理由としては透析者に対する情報不足と、医療関係者の消極的なことが考えられる。在宅透析は決して<こわい><危険><困難>なものではなく、<安心><安全><簡単>なものだと思っている。
私の行っている在宅透析を紹介することによって社会生活の維持向上を願っている透析者が、夜間透析、CAPDにつぐ第3の選択肢として在宅透析を考えられる一助になれば幸いである。
ランチョンセミナー
オランダの血液透析施設を見学して
演者:小西修二(坂井瑠実クリニック)
年々、透析患者数は増加しているにもかかわらず、わが国における在宅血液透析患者(HHD)数は現在100名前後で依然横這いの状態です。
このたび、オランダの透析施設のなかでも特にHHDが積極的に行なわれているDIANETグループの2施設(ユトレヒト、アムステルダム)を訪問する機会を得たのでDIANETグループのHHDの現状について報告いたします。
HHDは主にユトレヒトの施設で行われ、全血液透析患者160名のうちHHDは約80名で、そのうち21名が連日夜間家庭透析(nocturnal home hemodialysis:NHHD)を行い、その他はdaily short(週6回、2時間透析)を行っています。
NHHDの透析条件は透析回数が週6〜7回、透析時間6〜8時間、血流量150ml/min、透析液流量300ml/minで治療が行われ、ブラッドアクセスについては安全面も考慮してシングルニードルが採用されています。
また、透析効率の指標としては週当たりのKT/Vが3.6以上を目標とされています。
NHHDの患者選択は@安定透析患者A良いブラッドアクセスB適した住居C配偶者やパートナーの協力、などが定められています。
その他、HHDの臨床効果や施設血液透析(CHD)における日本との相違点など報告させて頂きたいと思います。
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