日本在宅透析支援会議(JSHD)

医療者側から望む在宅血液透析の透析液供給装置について

演者：高橋計行（長寿クリニック）

医療法人長寿会　長寿クリニック 1)、近畿大学医学部堺病院　腎透析科 2)
髙橋　計行（タカハシ　カズユキ） 1)、東野寧明 1)、大野卓志 1)、今田聰雄 2)

　わが国の在宅血液透析（home hemodialysis:HHD）は、透析施設と血液透析装置の不足という背景のもと1968年に名古屋で緊急避難的に始められた。当時から健康保険適応が認められない状況が続いていたが、1998年にはじめて保険収載されたことは、HHDを希望する患者および治療を行う医療機関にとってHHD普及につながる福音になると思われた。しかし、その後6年が経過した現在でもHHD施行者は100人を超えた程度であり、施設透析（center hemodialysis:CHD）が急速に普及したのに対し、HHDの普及率はまだまだ低い。わが国でのHHD施行者が増加しない原因としては、自己穿刺や介助者の問題から使用済み医療廃棄物の処理問題に至るまで多岐にわたるが、HHDが約40年間というCHDと変わらぬ歴史をもつにもかかわらず、いまだに専用の透析装置がないこともその大きな要因と考えられる。そこで今回われわれは、当院で管理しているHHD施行者43名に対して行われたアンケート調査の結果をもとに、HHD施行者にとっての理想のHHD装置とはどのようなものであるか検討し今後のHHD装置の方向性について考察したので報告する。

ワークショップ

全自動血液透析装置の開発
演者：竹澤真吾（鈴鹿医療科学大学医用工学部臨床工学科）

　腹膜透析と血液透析が簡単に行える在宅型の装置があれば、患者の自由度をある程度確保し、腹膜機能を維持しながら長期に渡る治療が可能となる。そのような観点から、新しい腹膜・血液透析装置を開発した。カセット型回路はA4版程度の大きさであり、装置本体に置くだけでカセットを自動固定、種類の判定、プライミングなどの準備を行う。患者がカセットから出ているチューブをカテーテルとつなげると、チューブ先端の圧力・温度センサによって自動的に排液が開始、排液終了後は注液に移行する。カテーテル圧を落差注排液と同様の圧力パターンとすることによって、注排液の違和感を抑えることができる。カセットの種類を変更すればon-line HDFも可能である。

（写真１）チューブ先端のセンサ

（写真２）試作した装置全景

ワークショップ

新しい在宅血液透析対応の透析機器

演者：大野邦夫（丸紅株式会社）

　在宅血液透析は、施設での透析にくらべ、時間を長くすることや回数を増やすことが容易で、透析医学会の統計データでは、ＥＰＯの投与量が低くてもヘマトクリットは高く、生存に関わるリスクも低いなど臨床上の利点が多いことが知られている。その利点の割には在宅血液透析の患者数は少ない理由のひとつとして、在宅で患者自身が操作するのに適した安全で簡便、日本の家屋にも適した小型で軽量な血液透析装置がなかったことがある。

　最近米国で、慢性腎不全の在宅療法に連日（６回／週）の血液透析又は血液濾過を実施することを前提とした新規のコンセプトのもとづくNxStageシステムが開発され、使用されているので紹介したい。このシステムは、血液透析モードではバッグ入りの滅菌透析液を、血液濾過では同じくバッグ入りの置換液を使用するので、水処理や透析液調整装置が不要になり、装置のデザインは非常に簡便である。医師の処方した条件で操作するときは、開始と終了をタッチするだけでよく、プライミング及び返血も自動化されている。本システムは在宅のみならず、勿論透析施設でも使用でき、またオプションのディスプレイ等を取り付ければICUにおける連続的血液濾過装置としても使えるデザインになっている。

　増加し続ける医療費の中で、患者により良い医療を実現する一つの方策が在宅医療である。穿刺を伴う体外血液循環治療でも、自己管理による在宅医療が可能であることは患者数は少ないが過去30年以上の在宅血液透析の実績により証明されている。連日透析が生理的にも臨床的にもすぐれていることは多くの報告により示されている。本システムは在宅で血液透析のみならず血液濾過も可能であり、透析液の汚染リスクもなく、CAPDのように腹膜劣化によるドロップアウトの心配もない。安全性は高く、装置は簡便、操作も簡単なので、慢性腎不全の在宅医療の手段として有力な選択肢になりうるであろう。

ワークショップ

「当社の考える在宅血液透析システムについて」
演者：八木隆雄（日機装株式会社）

【はじめに】
当社は長年透析装置の製造・販売に携わってきた企業として、患者さんの望む透析医療の一つである在宅血液透析のためのシステム開発を行うべく、一昨年、在宅血液透析プロジェクトを発足した。
基本コンセプトとして
「患者さんと介助者が安心できる在宅血液透析システムを提供する」
を掲げ、患者さんと介助者にとっての安心という観点から
１．安全であること（Safety）　
２．簡単であること（Simple＆Smart）
３．サポートが的確で迅速であること（Support）
のサブコンセプトを設定し、在宅血液透析システムの開発を進めている。

今回、当社が進めている在宅血液透析システムのあるべき姿について将来像を含め報告する。

【在宅向けとして望まれる透析装置の姿】
当社が患者さん、介助者さんに最も提供したいのは安心感である。
家庭にて安全に不安感を持つことなく透析治療をおこなうためには、まず透析治療の標準的な一連の操作を迷うことなく正確に行うことが必要になる。そのためには、第一にヒューマンエラーをおこし得ないような機構、画面構成、ガイダンス機能などが必要になると考えている。また、装置本体の故障を検知し安全に停止する機能や個々のパーツの信頼性向上も必要とされる。
さらに患者さんや介助者さんへの負担を小さくするためには、特に準備、片付けに関する作業をできる限りシンプルかつ自動化することが必要であると考えている。そのために、取り扱いの簡易な血液回路とその取り付け機構、プライミング、脱血及び返血操作の自動化が重要であると考える。
また、的確なサポートをする上で管理施設との連携は必須となるが、外部通信機能やデータ収集機能が有効な手法になると考えている。
その他、省スペース化、家庭での使用を想定した外観デザインなどにも考慮して開発を進めている。