日本在宅透析支援会議


一般演題
病棟におけるスタッフ教育の必要性と今後の課題〜緊急時対応マニュアルとクリニカルパスの利用について〜
演者:中西容子(京都武田病院)

医療法人社団 恵心会 京都武田病院 4病棟科
中西容子、山本由紀子、外村涼子、立畑希代美、三谷旬子、竹田美由紀
中西容子 先生
【目的】
当病棟は腹膜透析を行っている患者を管理する病棟である。
CAPD腹膜炎発症時の対応とクリティカルパスの利用について、スタッフへの意識調査、勉強会の実施の効果、今後の課題を報告する。
【対象及び方法】
2005年10月から12月に当病棟に勤務する看護師キャリア1〜8年、PD経験1年未満10名、2年目2名、3年目7名、4年目以上2名の年計21名にアンケート調査を行った。アンケートの結果を元に勉強会を実施、その効果を同様のアンケートで確認し、スタッフ教育の効果と今後の課題を検討した。
【結果】
アンケートの結果、電話対応については誤回答の増えた設問もあったが、連絡マニュアルとクリティカルパスについては存在を周知する回答の増加、活用の有無については前向きな回答の増加がみられた。
【考察】
CAPDにおける緊急時の対応について、全スタッフのアンケートに基づいた知識と意識レベルアップ目的の勉強会は効果的であったと考えられた。在宅療法の管理部門としての意識を持ち続ける事や継続教育は大変重要であり、今後も勉強会を続ける事が必要と考えられた。





一般演題
CAPD療法における災害対策マニュアルの作成と今後の課題
演者:山本佳子(新潟県立中央病院)

新潟県立中央病院 内科1)、新潟県厚生連けいなん総合病院 内科2)、新潟大学医歯学総合病院内部環境医学講座(第二内科)3)
山本佳子1)、三浦隆義2)、深瀬幸子1)、中枝武司1)、秋山史大1)、丸山資郎2)、下条文武3)
山本佳子 先生
阪神淡路大震災以後、新潟県においても中越大震災、さらに本年の豪雪があり、地域での災害対策システムの確立が求められている。災害が発生した時点での被災施設は、何もできない状況に陥ると考えるべきであるが、透析患者(スタッフも同様であるが)は自身や通っている透析施設が被災したからといって、家族や職場を放棄して被災地から遠く離れた施設へ移動することを希望はしない。そこで、被害を免れた被災地施設や被災地周辺施設が、自主的に支援体制を組みうる地域透析医療ネットワークと、これを支える情報システムの確立が必要となってくる。
ネットワークでは、地域中核病院(公的病院)を中心とした構成となるが、被災直後の地域中核病院は災害時救急病院としての機能が最優先され、急性・外科系患者、外傷性急性腎不全患者などの医療が主となるため、慢性維持透析患者の災害医療確保を地域中核病院のみに望むのは困難である。さらに、緊急事態に直面した患者は、平時なら忘れるはずのないことであっても答えられない場合があり、各施設は患者個々に携帯用情報カードなどを配布しておくことが必要と考える。一方、支援施設においては受け入れ患者に関する情報が提供されないことを前提に、標準的な透析の提供を準備すべきである。
そのため、被災地周辺の施設および地域中核病院は、平時から救急医療ネットワークを設立し、情報の収集・発信、支援体制を確立しておかなければならない。
今回、腹膜透析の災害対策マニュアルを作成した。全国的にも腹膜透析の災害対策マニュアルの作成・実施の検討を公表している施設が少ないことから、我々の経験を踏まえ、災害時および救急医療のみならず、平時からの透析医療における地域連携の重要性につき再認識し、今後の課題として提案していきたい。






一般演題
CAPD療法における病診・病々連携の構築〜大学病院と基幹病院における高齢要支援患者を対象とした地域CAPD networkの現状と今後の課題〜
演者:花岡一成(東京慈恵会医科大学)

東京慈恵会医科大学腎臓高血圧内科、神奈川県衛生看護専門学校付属病院内科
花岡一成、川口良人、山本亮、小坂直之、長谷川俊夫、山本裕康、横山啓太郎、細谷 龍男
花岡一成 先生
【目的と方法】近年Activity of daily life(ADL) の低下した高齢透析患者に対し在宅腹膜透析療法(HPD)を施行する試みが始まっている。東京慈恵会医科大学附属病院(以下、大学病院)と神奈川県衛生看護専門学校付属病院(以下、基幹病院)において平成14年1月より平成16年12月に大学病院、基幹病院で維持透析開始となった高齢患者を対象に、透析導入平均年齢、腹膜透析導入率、腹膜透析導入平均年齢、高齢透析患者での腹膜透析導入率、介護保険利用率を比較し高齢者HPD診療の現状と今後の課題を検討した。
【結果】検討期間中に大学病院246名、基幹病院98名の維持透析を開始した。透析導入時年齢は平均63.0歳、66.0歳(大学病院、基幹病院の順、以下同じ)。全年齢での腹膜透析導入患者数は50名、23名、HPD導入率は21%、23%。HPD導入年齢は、平均59.3歳、65.1歳、60歳以上でのHPD導入率は15%、23%。介護保険利用は6名、16名、介護利用のHPD患者の平均継続期間は平均21.2月20.3月。以上、大学病院では高齢者HPD導入、介護保険利用が少なかった。
【結論と考察】基幹病院では往診医や地域看護・介護支援スタッフとの連携による地域CAPD networkを構築し、高齢HPD治療を広げることに成功した。一方、大学病院では、病院内外のCAPD診療 networkは確立途上にあり、高齢者の透析選択時に医療側も患者側もHPD導入に躊躇することが多い。患者居住地が遠方に分散しnetwork確立は容易ではないが、大学病院は高度先進医療の場として循環器疾患や悪性腫瘍等の合併症を抱える高齢患者も多く、基幹病院同様に高齢透析患者に対しHPDを積極的に導入するために病院内外のCAPD診療 networkを整備し、高齢透析患者および家族のサポートを推進することが必要である。





一般演題
在宅腹膜透析の長期継続を目指した王子病院の取り組み−合併症の予防と早期発見−
演者:山下元幸(貴友会王子病院 泌尿器科)

貴友会王子病院 泌尿器科1)、内科2)、透析室3)
山下元幸1)、山下朱生1)、都筑優子2)、西澤欣子2)、窪田実2)、矢野由紀3)、高橋康弘3)
山下元幸 先生
【はじめに】腹膜透析療法中止の原因となる、カテ−テル感染症を含むカテーテル関連合併症を予防し、早期発見に努めるため王子病院の取り組みを紹介する。
1)SMAP: 入院期間が短期間ですむSMAPは、腹膜透析導入患者の26%に用いられるまでに広く本邦に浸透した。透析開始時、縫合部は治癒しており透析液リークはなく、カテーテル周囲の線維性癒着が完成するため感染防止にも寄与する。また出口作製術において縦切開によるカテーテルの取り出しを試みたのでその成績も報告する。
2)ウルトラロングカテーテル(ULLC)の使用:出口感染に強いとされるバスタブカテーテルは、2本のカテーテルをチタニウムエクステンダーで連結して作製するため、医療経済上、技術上の欠点が指摘されていた。山川によって開発されたULLC(全長80cm)を使用することで、留置術が容易となり、連結部におけるリークもなくなった。
 3)Peritoneal Wall Anchor Technique(PWAT)アプリケーターの使用:
カテーテル先端の位置移動とそれに伴った大網による閉塞は、腹膜透析を続行することが不可能となる場合が多い。深澤らが開発したPWATアプリケーターを使用することにより、一般的なカテーテル挿入術においてPWATを施行することが可能であり、位置移動の予防が可能となった。
4)カテーテル造影:カテーテルはPD療法の要であり、その機能不全は療法の継続および患者予後に大きな影響を与える。カテーテル造影は容易に施行できる非侵襲的な安全な検査であり、感染症を除く殆どのカテーテル関連合併症に適応となる。
5)カテーテルトンネル感染に対する出口変更術(Subcutaneous Pathway Diversion : SPD):SPDはカテーテルを皮下の適切な場所で切断した後、チタニウムエクステンダーを用いて新しいカテーテルと接合し、出口を感染部位と離れた場所に作製する方法であり、侵襲が少なく、腹膜透析を継続したまま施行できる。
6)遷延性・反復性腹膜炎患者に対するPDカテーテルの入れ替え:
バイオフィルムによる腹膜炎が想定された場合、カテーテルを抜去して、腹膜炎の完治数ヶ月後に新たにカテーテルを挿入するのが一般的である。しかし、腹腔内癒着によるカテーテル挿入不能例も経験しており、このような場合炎症が減弱するのを待ち、一期的な入れ替え術を施行している。
【まとめ】在宅腹膜透析の長期継続を目指し、王子病院では数々の検査、手術を積極的に施行している。さらに王子病院では、患者との連絡に携帯電話や専用のテレビ電話を使用し、遠隔医療をおこなうことで合併症の早期発見に努めている。





一般演題
排液中の細胞群と腹膜機能の関係
演者:神田英一郎(総合病院取手協同病院)

総合病院取手協同病院 腎臓内科1) (株)エスアールエル2)
神田英一郎1)、高井健治2)、前田益孝1)、椎貝達夫1)
神田英一郎 先生
腹膜透析の主な問題点として、機能的形態的な腹膜の変化やEncapsulating peritoneal sclerosis (EPS) 等の合併症により、長期的継続が困難であることがあげられる。腹膜の主な構成細胞である腹膜中皮細胞の障害や変性が、腹膜の変性に影響すると考えられており、腹膜の劣化やEPS早期診断の指標として、Peritoneal equilibration test (PET) や、排液中のCA125等が報告されている。また、排液細胞診による細胞面積の検討から、腹膜中皮細胞面積が腹膜透析期間に比例して有意に増大すること、および大型ないし異型中皮細胞の出現が、腹膜組織障害や回復の指標として報告されている。
そこで、腹膜透析排液中に含まれる各種細胞の性状を調査することにより、腹膜機能の解析を開始した。当院腎センターの患者41名を対象として、腹膜透析排液中の細胞をFlow cytometry (FCM)にて測定し、腹膜中皮細胞の性状と腹膜透析効率や腹膜透析期間解析した。その結果、cytokeratin陽性細胞は、マクロファージ、好中球やリンパ球と異なる独立した細胞集団であり、中皮細胞とほぼ一致していた。各測定値を比較したところ、腹膜透析期間と各種細胞数(腹膜中皮細胞、マクロファージ、リンパ球)に相関関係(p<0.01)を認めた。一方、D/P Creatinineは腹膜中皮細胞のサイズと正の相関関係にあり、腹膜中皮細胞のCytokeratin蛍光強度や腹膜透析排液中の腹膜中皮細胞数の割合と負の相関関係にあった。以上の結果から、腹膜透析期間は腹膜の変性に関与しており、腹膜中皮細胞の変化は腹膜透析効率に影響を及ぼすと考えられた。
今後、症例数を増やし、経年的な変化や腹膜炎による影響の評価を予定している。




一般演題

腹膜の線維化におけるMatrix metalloprotainase (MMP)-1の役割について
演者:阿部克成(長崎大学医学部附属病院)

長崎大学医学部附属病院第二病理、長崎大学医学部附属病院第二内科、長崎大学医学部附属病院血液浄化療法部、長崎大学医学部第三解剖
阿部克成、宮崎正信、小畑陽子、中沢有香、中沢将之、藏重智美、夏 志銀、原田孝司、小路武彦、田口 尚、河野 茂
阿部克成 先生
(目的)MMPは細胞外基質を分解する分解酵素であり、細胞外基質のturn overを制御する因子として重要である。また、MMPは線維芽細胞や血管内皮細胞の増殖、分化などの機能制御を司ることが明らかとなってきており、硬化性腹膜炎などの硬化性もしくは線維性疾患でその発現増加が報告されており、その発症進展に関与することが示唆されている。今回我々は、MMP-1が腹膜の線維化に及ぼす影響を検討した。
(方法)ICRマウスにクロールヘキシジン(CG)(0.1% 0.01ml/kg)を週3回、3週間腹腔内投与し腹膜線維症モデルを作成した。CG投与開始1週後にカチオン化ゼラチン粒子を用いてMMP-1DNAプラスミドを腹壁に注入し、MMP-1投与2週後の腹膜肥厚の程度を組織学的に検討した。
(結果)腹膜線維症マウスにおいて、MMP-1投与群では非投与群と比較して腹膜肥厚の程度、III型コラーゲンの発現は有意に増加した。また、α-smooth muscle action(α-SMA)陽性細胞数、F4/80陽性マクロファージ数、CD31陽性血管内皮細胞数もMMP-1投与群では非投与群と比較して有意に多かった。
(結論)CG投与腹膜線維症モデルにおいて、MMP-1は線維芽細胞、血管内皮細胞の分化増殖を促し腹膜の線維化進展を増悪させると考えられた。





一般演題
CAPD離脱方法と離脱後の転帰について
演者:阪田章聖(徳島赤十字病院)

徳島赤十字病院 外科
阪田章聖、一森敏弘、木村秀、沖津宏、石川正志
石倉久嗣、滝沢宏光、湯浅康弘、榊芳和、渡辺恒明
阪田章聖 先生
 CAPDがわが国に導入され20年以上が経過した。その利点も多いが合併症も無視できない。特に被嚢性腹膜硬化症(以下EPS)の心配は衆目の一致するところである。現在までにその発症を予知するために多くの研究者が日夜努力をされ、その報告から透析期間、除水量、腹膜平衡試験(PET)、ブドウ糖曝露量、剥離中皮細胞面積、壁側腹膜の病理学的検討、TGFβ、MMPなどの炎症マーカー、腹腔鏡所見やCTなどの検討がなされているが特に離脱後のEPSというブラック・ボックスの原因はいまだ解明されていないのが現状である。今回当院で経験したCAPD離脱例からその後の経過について検討しましたので報告いたします。
1982年から2005年12月までに190名あまりをCAPDに導入しその内なんらかの理由でCAPDを離脱したのは34例であった。(CAPD中の死亡例は約90例でうち1例がEPSで死亡している。)離脱理由としては難治性または頻回腹膜炎12例、EPSへの危惧7例、腎機能回復と腎移植がそれぞれ4例、除水不良、出口部トンネル感染及びコンプライアンス低下がそれぞれ2例と両側後腹膜出血後のPET上昇1例でした。腹膜炎のためカテ抜去後に2例がEPSをきたし手術を行ったが1例は死亡し、3例はCT上COCOON形成を認め、1例は腹水貯留のため腹腔洗浄を約2年5ヶ月行った。EPS危惧例の5例にカテを抜去せず洗浄を行い、現在も2例が2年5ヶ月洗浄中である。他の2例はHD併用回数を多くしカテ抜去時にIVHカテを用いて閉鎖ドレナージを行った。腎移植例では術後腹水が一時的に貯留傾向あり、2〜3週後にカテを抜去している。急激なPET上昇例ではカテ抜去時に閉鎖ドレナージを行い経過は良好であった。その他の症例はとくに問題なく経過している。PET上昇例や長期CAPD後の離脱には腹腔洗浄が行われるがその期間には慎重であるべきで2年あまりの洗浄後に逆にEPSを発症した経験があり、最近は閉鎖式ドレナージと細胞診検査を行い良好と思われる経過をとっている。




一般演題
中張液と除水不全
演者:保井明泰(門真クリニック CAPD支援センター)

保井明泰 先生
【目的】中張液の使用と除水不全について検討する。
【方法】体液のコントロールを維持するために1日総除水量700mlを目標に低張、中張のCAPD液を早期より適宣選択し、長期CAPDの継続を目指す。
【結果】10年以上継続した症例のうち 除水不全を来した8例(男性4、女性4)。その期間は 145.5±56.1(ヶ月)(平均12年2ヶ月)。
Ht 33.5±2.7(%)、Alb 3.7±0.3(g/dl)、BUN 55.3±19.2(mg/dl)、Cr 10.1±2.1(mg/dl)、K 4.0±0.8(mEq/l)、Ca 10.1±1.0(mg/dl)、P 5.1±1.1(mg/dl)、血圧(S) 130.6±14.6(mmHg)、血圧(D) 70.1±10.2(mmHg)、体重 56.4±8.1(kg)、1日尿量 0、1日の総除水量 820±100mlであった。
除水不全の治療はUFPD(DAPD) 4例、腹膜休息 2例、中性液変更 2例であり、現在もCAPDを継続中である。
【結論】中張液を早期より適正に使用することは、CAPD長期継続に有用である。



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