日本在宅透析支援会議


一般演題
技士としてHHDに関わった経験
演者:上村恵一(札幌北クリニック)

医療法人社団 恵水会 札幌北クリニック 透析室
上村恵一、成田幸子、松井博子、大平整爾、今 忠正
上村恵一 先生
【はじめに】現在日本国内における慢性透析患者は約25万人とされている.このうち北海道の慢性透析患者が約1万2千人、在宅血液透析患者は2004年12月31日現在で3名という現状である.特に北海道では北国特有の著しい環境の変化、低い人口密度といった独特の問題があり、在宅血液透析導入への障壁は依然として高いものがある.今回我々は、最北地での在宅血液透析1例において臨床工学技士の観点から見た寒冷地における在宅血液透析の問題点について報告する.
【当院での在宅血液透析の現状】当院では、2003年11月より北海道北部に位置する苫前郡羽幌町にて、1例の慢性透析患者に対し在宅血液透析を開始.現在まで透析中のトラブル等もなく良好に経過をしている.
【北国特有の問題】地理的に北海道の道北部日本海側の地域は、夏期・冬期の気温差が約45℃、積雪量年平均129pと多く、時には日本海からの強烈なブリザードによる交通障害が頻発する、といった特徴を持つ.このため、在宅血液透析導入に際しては、地理的な特性をふまえた上で考えられる諸問題について解決の必要があった.水道、RO水設備、透析材料(特にダイアライザーなどの配送、保管)に関しては、低温や凍結防止策を施すための工夫、材料の変更などに労力を要した.また機器の運用においても、冬期間のRO膜保護のために回収率の変更などの措置を行った.
【在宅血液透析を経験して得たこと】当院では1例の在宅血液透析症例を経験し、遠隔地で地理的条件の厳しい地域での在宅血液透析施行には、その地域の環境特性等を考慮して問題解決のための措置が必要であることが重要であると考えられる.幸い当院での症例でも、懸念されたトラブル等はなく順調に経過をしている.しかし、措置を講じるための費用負担、運用コスト等の面ではまだ問題があり、解決策が必要であると思われる.






一般演題
透析医療のパラダイムシフト−PD離脱期のHHD−
演者:西澤欣子(貴友会王子病院)

貴友会王子病院 腎臓内科1)、泌尿器科2)、透析室3)
西澤欣子1)、都筑優子1)、窪田実1)、山下朱生2)、山下元幸2)、鴫島寛3)、早川英明3)、臺正徳3)、小川葉子3)、矢野由紀3)、高橋康弘3)
西澤欣子 先生
【目的】PDからHDへの療法変更症例に対し在宅血液透析(HHD)を導入し,在宅透析を継続 した.
【症例】26歳男性.アルポート症候群により1995.5.25.PDを導入.除水不良のためPDの継続が不可能となったが,患者が在宅透析療法の継続を希望しHHDの併用を計画した.
【結果】2005.4.23.内シャント造設術を施行し,2005年11月3週間の入院期間中にHHDの教育を施した.入院中ボタンホール作製,自己穿刺,回路組み立て等の教育,自宅の環境整備を行った.3週間の入院期間中ではボタンホール作製と自己穿刺は完了せず,退院後も外来にて教育は続けられた.患者の生活に合わせたPDとHDの併用処方を組み,週2回のHDと週4回のNIPDを開始した.2006.1.6.にHHD併用を開始,体重コントロール良好であり順調に経過している.
【考察】PDの最大の利点のひとつは,治療の場が在宅であるという点にある.在宅透析の利点を享受した患者はPD離脱後も在宅における治療を希望することが多い.今回PDからHDへの療法変更に際し,HHDの併用導入を試みた.在宅透析の維持という観点からHHDの併用を利用した療法変更は患者の生活スタイルを維持できる優れた手段と考えられた.





一般演題
当院の在宅血液透析(HHD)導入における教育方法と課題
演者:宮崎真一(埼玉医科大学病院)

埼玉医科大学病院 血液浄化部1) 同腎臓内科2)
宮崎真一1)、大谷木雄太1)、一噌登史紀1)、村杉 浩1)、塚本 功1)、大浜和也1)、山下芳久1)、菅原壮一2)、鈴木洋通2)
宮崎真一 先生
【はじめに】当院では1999年より在宅血液透析(HHD)に着手し、現在までに6例の導入教育を経験した。その中でHHD導入における経験から、事例を踏まえて教育方法の工夫点および問題点について報告する。
【事例1】AVFによる穿刺に対して恐怖心が強い患者の要望からカニューレ針を選択した。従来では穿刺の容易さや操作性を考え、翼状金属針(AVF)を使用していた。しかしカニューレ針は内筒針とカニューレの長さがあるために外筒針挿入と内筒針抜針、テープ固定、さらには回路接続などが困難であり、AVFとは異なる工夫を必要とした。
【事例2】仕事の都合上1ヶ月間で行って欲しいと要望があり、泊り込みで非透析日にも教育を行った。従来の教育は原則3ヶ月間、通院を行いながら週3回の透析中に教育を行っていた。また通常業務と並行して行っているために1回の教育時間を1〜2時間程度としていた。今回は1ヶ月間で終わらせるために事前学習やビデオカメラの利用を試みたが、短期集中的に行うには多くの課題が認められた。
【事例3】穿刺痛を少なくして欲しい患者の要望からボタンホール穿刺法を取り入れた。ボタンホール用穿刺針は先端形状が球状であり、自己穿刺への恐怖心が少ないペインレスニードルを選択した。スタッフにとってもボタンホール穿刺は初めての経験であり、教えるのも手探り状態であったためにホール作成までの時間を要した。
【まとめ】今後もHHD導入を受け入れていくなかで、患者の要望はさらに多様化すると考えられる。そのためには貴重な経験を大切にするとともに導入教育を充実していく必要がある。





一般演題
自立支援透析から移行したHHDの1例
演者:福田淑子(芦屋坂井瑠実クリニック)

福田淑子 先生
【はじめに】当院は2005年4月に開院し普段からHHDの希望に関わらず、セルフケアの一環として興味のある人にセットやプライミング、機械の操作の指導を行っている。
【目的】通院透析のなかで在宅血液透析(HHD)の訓練を行いHHDに移行した症例を報告する。
【経過】本症例は43歳、男性。原疾患IgA腎症。2001年7月他施設にて血液透析導入され、HHDをする目的で当院受診、2005年6月20日より週3回維持透析を開始する。年内開始を目標に本人は7月下旬より、介助者は仕事の都合により8月中旬より透析開始・終了時などに指導を始めた。その後技術の習得状況、理解度に応じて自己穿刺、各装置の操作の指導・訓練を行い、約3.5ヵ月後に 本人、介助者とも基本的な操作を習得する。トラブルシューティングなどは非透析日に2回(1回2時間程度)、実演し訓練を行った。HHD開始まで残り約1ヶ月間、空き病室を利用してスタッフとの連絡は院内PHSを使用し、自宅を想定した個室透析での最終訓練を行った。訓練開始から約4.5ヵ月後HHD開始となった。
【まとめ】HHDの訓練のため特別な時間を設けることなく通院透析からHHDへの移行は可能である。




一般演題
在宅血液透析患者からのメッセージ
演者:大浜和也(埼玉医科大学病院)

埼玉医科大学病院 血液浄化部1)、同 腎臓内科2)
大浜和也1)、宮崎真一1)、山下芳久1)、菅原壮一2)、中元秀友2)、鈴木洋通2)
大浜和也 先生
【はじめに】当院で在宅血液透析がはじまったのは7年前である。現在では6名の透析者が自宅で治療を行っている。スタートして見ると思いのほか良かった事、苦労した事に遭遇する。今回は在宅血液透析者からの"メッセージ"として協力してくれた3名の取材しまとめたので報告する。
【事例1】スタートしてから5年目を迎えた。半信半疑で在宅血液透析の話を聞き本当に自分でできるのだろうかと思い、今まで通院で行ってきた血液透析を在宅血液透析に切替えスタート、約3ヶ月間の教育を受けてスタートする事となった。仕事も以前行っていた事を継続することができ、本人の口から装置は"自分の腎臓"と言う言葉が出るほどの在宅血液透析の熱狂的ファンに変貌した。
【事例2】スタートしてから1年が経過した。本人は自宅で仕事を行っている為に長期間休む訳には行かない事、通院するにも車で往復3時間かかるとの理由で在宅血液透析の教育期間を1ヶ月間で終了してほしいと強く希望してきた。院内にある宿泊施設へ宿泊し透析日は実技教育、非透析日は知識を獲得するための教育をおこなった。介助者も協力的であった事とビデオカメラを持参して実技教育を撮影するなどの工夫を行った為に教育効果があがりスタートする事ができた。
【事例3】スタートして2年目を迎えた。自宅でできる方法がないかと模索していた頃に在宅血液透析の情報をキャッチし当院でスタート、一人ですべてが行えるようにトレーニングを行った。3ヶ月を迎える頃には一人で穿刺、回収を行う事ができた。黒みを帯びていた顔色が変わったことを訴え運転免許証の顔写真と今の顔色が明らかに違う事がわかった。
【おわりに】人が住む家には不思議な魔力が存在するのだろうか、家で行う治療は効果も良く、貧血改善については通常透析よりも遥かに良い結果がでている。血液透析は家でできる素晴らしい治療の一つ、より多くの人たちがその恩恵を受けられるようになれば良い。




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