日本在宅透析支援会議
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腹膜透析に関するFAQ(医療関係者)

皆様から寄せられたご質問に対して、全国の顧問や幹事の先生方が回答致します。

ご質問は、こちらから受け付けております。


質問 質問者:看護師
ご質問 腹膜透析の排液量には正常値や異常値というものはあるのでしょうか?
また、なぜ排液は黄色くなるのか教えてください。
先生が腹膜透析か血液透析かを判断する条件はなんでしょうか。
何を基準に透析の種類を選ばれているのか教えてください。


回答 回答者:長寿クリニック 大野卓志先生
ご質問有難うございます。腹膜透析の排液量に関してですが、腹膜透析液には、
ブドウ糖濃度の異なる3種類の液とトウモロコシを原料としたイコデキストリン液が
あります。透析液の種類や糖濃度、貯留時間によって排液量は増減しますので、
正常値や異常値というものはありませんが、一般的には平均除水量(排液量から
注液量を引いた量)は1.25%ブドウ糖透析液で150ml、2.5%ブドウ糖透析液で450ml、
4.25%ブドウ糖透析液で950mlと言われています。
しかし、4.25%の高濃度透析液は腹膜を傷害する恐れがあるので頻回使用は
すすめられません。その替わりのイコデキストリン透析液では500ml以上の除水量が
得られることが多いようです。
次に排液が黄色であるのは、肝臓から分泌される消化液である胆汁中に含まれて
運ばれてくるビリルビンという色素のためです。
最後に透析療法の選択基準に関してですが、ご存知のように透析療法には、
腹膜透析、在宅血液透析、施設血液透析があります。
これらの治療法についての情報を患者さんに十分に提供することが一番重要なことですが、
一般的には、残存腎機能の保持に優れ、時間的な束縛が軽く、社会復帰しやすい腹膜透析から
開始することが最も望ましいと思います。
しかし、患者さんの意志や家族の協力が得られない場合、あるいは下腹部の手術の既往があるため、
腹膜の癒着の程度により十分な透析ができない可能性がある場合やその他の医学的な要因により、
腹膜透析を回避する場合もあります。
いずれにしても患者さんにとって最も有用な透析治療を選択する、あるいは組み合わせることが
重要であると思います。




質問 質問者:看護師
ご質問:腹膜透析は治療期間に限りがあるといわれていますが、一般的に腹膜の機能がもつのは、何年くらいなのでしょうか?最近、中性の腹膜透析液が使用されているようですが、これによって、腹膜の機能は衰えにくくなるのでしょうか?
また、近年、血液透析の患者さんは治療期間が長くなると、重症下肢虚血をはじめとした抹消動脈閉塞症などの合併症が多く見られますが、腹膜透析でも同じ合併症は起こるのでしょうか?起こるとすれば血液透析と比べてその頻度はどうなのでしょうか?
回答 回答者:長寿クリニック 大野卓志先生
ご質問有難うございます。

一般的には約8年が腹膜透析を中止する目安になっているようです。もちろん、腹膜透析の施行期間だけではなくて、除水能の低下が持続している場合や腹膜平衡試験や中皮細胞診の結果を参考にして腹膜機能不全から被嚢性腹膜硬化症が発症する前に中止を判断することが多いと思われます。

中性透析液を使用するようになって約8年になります。われわれの施設では短期的な検討ですが透析液を酸性液から中性液に変更した結果、CA125(腹膜中皮細胞量の指標)の上昇やヒアルロン酸(炎症や組織修復の指標)の低下に加えて、腹膜に対して傷害性に働くと報告されているGDPsや腹膜の透過性亢進や除水不全を惹起させる可能性が指摘されているAGEsの低下が認められました。他の施設でも同様の結果が報告されています。中性透析液が生体適合性に優れ、腹膜劣化を抑えることで、長期腹膜透析の施行が容易に継続可能であるという内容の報告が今後発表されることを期待しています。

また、重症下肢虚血に至る末梢動脈閉塞症の発症に関して血液透析と腹膜透析の比較についてですが、長期的な研究の結論はまだ出ていません。末梢動脈閉塞症の最大危険因子は加齢(高齢)と糖尿病です。加えて高血圧や高脂血症がありますが、血液透析や腹膜透析の施行がどのように関わるのかは不明です。透析者の高齢化や糖尿病や高血圧を原因とする透析者の増加のため、心血管系の合併症は増加しています。腹膜透析は急激な体液量や血圧の変動がないため、循環動態を一定レベルに維持することが可能ですので、その点では血液透析と比較して、有用な治療法であると思われます。

質問 質問者:看護師
ご質問:患者の性別 女
患者の年齢 61
患者の原疾患 慢性腎不全
CAPD12年目の方ですが2週間位前より出口部の腫脹・熱感あり
抗生剤投与にて症状は軽減され現在は感染兆候見られないのですが、先週末より上部カフが出口部より突出してきました。
今後どのような処置、ケアを続けたらよいですか?初めてのケースでどのようにしたらよいか教えてください。また、適切な参考文献等あれば教えて下さい。
回答 回答者:長寿クリニック 大野卓志先生
ご質問有難うございます。
現在は出口部の感染は治癒しているみたいですが、外部カフが出口部から突出している状態なのですね。
カフは化学繊維でできています。腹膜カテーテルにカフが必要なのは次の理由によります。現在は第一カフと第二カフの二つのカフがついている腹膜カテーテルが主流です。第一カフは腹膜に縫いつけてカテーテルが抜けないようにするため。第二カフは皮下組織とくっつくことによってカテーテルの固定を強固にすることにより細菌の侵入を防止するためです。
出口からどのくらい離すかについて15年ぐらい前までは多くの議論がありました。理由はカフが出口部に出てきてしまうこと。あまり奥に入れるとトンネル感染の予防にならないことなどから3〜4cm出口部から離れた皮下に置くことがよいと結論しました。
腹膜透析を開始してから痩せたためにカフが脱出した症例は私たちも経験があります。
もし、痩せたためにカフが突出したのであれば、カフ感染がなければ問題ありません。過去にはカフが顔を出さないように奥に置きましたが、最近ではカフの種類によっては、顔を出している方が出口部の周囲組織と癒着して、細菌の浸入を防ぐという考えもあり、わざとカフを出すようにしている施設もあります。
カフ感染のためにカフが突出したのであれば、外科的な治療が必要になることもあると思います。要は突出によって感染発症の恐れがあるか否かです。
感染が発症するような場合の治療法としては、カフシェービング、アンルーフィング、カテーテルの入れ替え、および出口部変更があります。カフが完全に脱出しているのであればカテーテルを傷つけないようにして行うカフシェービングは有効と思われます。出口部感染が続いているのであれば、アンルーフィングが以前はよく施行されていましたが、再発が多く、皮下トンネル部が充分確保できないため腹膜炎へ進展する可能性もあり、望ましい処置とはいえません。カテーテルの入れ替えは手術侵襲を考慮すると最終手段と思われます。結論としましては、感染がなければそのままにして下さい。感染が起こり治り難ければ出口部変更術が簡便で有用な治療法ではないかと思われます。
まずは、実際の出口の状態をみないと判断しにくいところもあります。初めてのケースのようですので一度、経験のある医師に診てもらうのも一つの方法かもしれません。

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