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患者の性別:男性 患者の年齢:57歳 患者の原疾患:糖尿病性腎症 |
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先日、腹膜透析の為にカテーテルを手術したところ、カテーテルに液が入っていかない為に手術をやり直しするとの事。
また、主治医は腹膜透析より血液透析の方が良いのではないかとおっしゃいます。
しかし患者本人は、腹膜透析を希望しています。
今後もカテーテルをやり直さなくてはならない事態などがあるのでしょうか?
なぜ薬品が入らないのか解らないとの事でしたが。 |
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回答者:札幌北クリニック 大平整爾先生 |
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腹膜透析を行うには、腹膜カテーテルの留置が必要不可欠です。
腹膜カテーテルに関連する主な合併症は、以下の三つです。
1.カテーテル周囲からの液漏れ
2.注液・排液の困難
3.カテーテル出口部またはトンネル感染症
ご質問は上記の2.に該当します。
腹膜カテーテルは小骨盤腔に正しく留置されなければなりませんが、最終的にカテーテルを固定する前に試験的に液体を注入して、カテーテルの位置が適切か否かを確かめることを行います。
ですから、カテーテル留置後に腹膜透析液が入っていかない(注入できない)というのであれば、
(1)カテーテルが所定の位置から逸脱して(ずれて)いる可能性があります。
もう一つの原因は(2)カテーテルの側孔を大網が覆ってしまっていることです。
(1)も(2)も少量の造影剤を使用してレントゲン写真を撮ってみると、いずれであるかを診断できます。
カテーテルの位置のずれは比較的よく起きることで、患者さんに歩行してもらうことで所定の位置に戻ることがあります。
だめであれば、再手術が必要となります。
(2)の場合は一定の液体を高圧でカテーテルを通じて注入してカテーテルを覆っている大網をカテーテルから離すことが出来ればいいのですが、成功しなければもう一度手術を行い、この大網を切除することが必要になります。
腹膜透析をご希望であれば、辛いでしょうがもう一度カテーテル留置術を受けていただくのが良いと思います。
腹膜炎がなくとも排液にフィブリン塊または糸が多く、カテの目詰まりを起こすことがあります。
この場合はヘパリンという薬液を透析液に混ぜて注入してうまくいくことがあります。
いずれにせよ、透析液が注入できない原因を明らかにして次のステップへ進むことが大切です。
担当医とよくご相談ください。
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性別:男性 |
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血液透析液はカリウムが含まれているのに、なぜ腹膜透析液には含まれていないのでしょうか?
その他の電解質の組成は血液透析液とほとんど同じなのに、カリウムだけが極端に違いすぎるので、疑問を抱きました。
返答宜しくお願いします。
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回答者:長寿クリニック 今田聰雄先生(バクスター株式会社の成合寿紀氏から資料の提供を受けました) |
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はい。確かに腹膜透析液の中にはカリウムが含まれておりません。
このことに触れます前に、腎不全と血清カリウムとの関係について若干触れさせて頂きます。
ヒトの体の中、具体的には身体を構成している細胞と血液の中にはカリウムが含まれています。
血液中のカリウムの量は、3.5mEq/L - 5mEq/Lと非常に狭い範囲内に維持されています。この調節の役割を担っているのが腎臓です。
カリウムは食事などから摂取されますが、必要以上に高くならないよう腎臓から排泄されているのです。腎臓の機能がなくなる腎不全になりますと、この調節機構が十分に働かなくなり、高カリウム血症という病態が発症します。
高カリウム血症になりますと、口唇のしびれ、四肢の重たい感じや冷感、脈の乱れ、脱力感、悪心、嘔気、筋麻痺、動悸、胸苦しさといったさまざまな症状が出てきます。
腎不全となった場合、高カリウム血症にならないよう、食事摂取による調節と併せて、透析でカリウムを除去することでコントロールすることになります。
血液透析の透析液の中にはカリウムが2mEq/Lほど含まれ、血液の値よりも低くなっていることで、血液中のカリウムを除去することができます。
カリウムの除去量をさらに増やすためには血液透析液中のカリウムの濃度をさらに下げればよいのですが(実際にそうした血液透析用の透析液があります)、その場合、高カリウム血症とは逆に除去しすぎた場合に起こる低カリウム血症にも留意しなければなりません。
この低カリウム血症、心臓に影響を与え、不整脈などの症状を起こしてしまいますので、高カリウム血症と同様、要注意です。特にジキタリスのような強心薬を服用している場合はこうした症状を惹き起こしやすいと云われています。
血液透析の場合、大体4時間程度の決められた時間内で物質を除去しますので、透析液中のカリウムがあまりに低いと急速に透析者の血液中のカリウムが除去され、返って危険な低カリウム血症になるおそれがあるため、そうした危険性を抑える意味からカリウムを致死的な危険域にはならない量、つまり2mEq/Lほど入れてあります。
一方、腹膜透析の場合は、短くても2時間、長ければ8時間、持続的に緩徐な透析を行っています。その上、腹膜透析の特徴である「緩やかな透析」なので、血液透析のような血液中のカリウムが急速に低下することはありません。
そして、十分にカリウムを除去したい目的と合わせて、腹膜透析液中にはカリウムを入れていません。このことによって、透析者の食事摂取の制限を少しでも緩和させることが出来るので、「食事の制限が緩やか」となる腹膜透析の特徴の一つとなって、CAPDを行っている方々の生活に役立っているようです。
(参考文献)平田純生 編著. 腎不全と薬の使い方 Q&A. じほう. 2005: p.343
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質問者:看護師 患者の性別:男性 |
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CAPD患者さまが、腹膜交通症になってしまいました。
治療選択として、胸膜癒着術を行なっています。
わからないのは、腹膜に穴が(先天性ではありません)あいているのに、なぜ胸膜を癒着させるのですか?胸膜には障害がないのに・・・。
患者さまは右がわのみ癒着させていたのですが、左はしなくてもいいのですか?
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回答者:長寿クリニック 大野卓志先生 |
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CAPDの患者さんが腹膜交通症になってしまい、右側の胸膜癒着術を行われたということですが、
おそらく、この患者さんは右側の胸水貯留がみられ、いわゆるCAPD横隔膜交通症の状態で原因は不明ですが横隔膜に穴があいていたのではないかと思われます。
さて、CAPD横隔膜交通症は、偶然、横隔膜の何処にあるかわからないほどの「小さな穴」が開いていたため、腹腔と胸腔が交通し腹腔内の透析液が胸腔に移行して胸水貯留をきたす疾患です。
考えられる理由は腹腔内に、通常は存在しない透析液を入れるため、透析液の量が通常以上に増えると、腹圧がより高くなり、原因不明の「小さな穴」が横隔膜に存在していると、
その「小さな穴」を通して、透析液が胸腔側へ流入したものと思われます。
透析液が横隔膜を通過する本当の理由は不明ですが、横隔膜の解剖学的欠損部を通じての移行、あるいは横隔膜リンパ管を通じての移行が推測されており、解剖学的欠損部もリンパの流れも右側の方が多いことより、約90%が右側胸水と報告されています。
治療としては、CAPDの一定期間中断、胸膜癒着術、外科的処置が試みられています。
ご質問の胸膜を癒着させる方法は、胸腔と腹腔の境にある筋肉の薄い膜である横隔膜に欠損部が存在して胸水が貯留するのですから、胸水を排出後に胸腔内に、血管外では固まる性質のある自家血や、一種の炎症を起こさせて癒着させるテトラサイクリンなどの癒着物質を注入して横隔膜の「小さな穴」をふさぐのは一般的な治療法です。
また、先ほども述べましたが、90%が右側胸水と報告されていますので質問の方も胸水が右側だけでしたら両側の胸膜の治療をする必要はありません。
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質問者:看護師 |
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CAPDの方の残腎機能の計算式を教えて下さい。
教科書に、下記のように書いてありましたが、複雑でわかりにくいです。
これが一般的なのであれば具体的に解説をお願いします。
@24時間の透析排液と尿をためる。
A週当たりの残腎尿素、クレアチニンクリアランスを計算する。GFRを推定するにはクレアチニンクリアランスの60%を用いる。
B排液量にD/P比をかけて、一日の透析によるクリアランスを測定する。
C図を用いて、尿素分布量、体表面積を計算する。
D週当たりの総尿素およびクレアチニンクリアランスを計算し、1.73m2で標準化する。
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回答者:長寿クリニック 大野卓志先生 |
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ご質問有難うございます。ご質問の内容からは、残腎機能だけではなく、腹膜クレアチニンクリアランスと腹膜KT/V も併せてむずかしいかも知れませんがご説明させていただいた方が理解しやすいと思います。
CAPD における至適透析の定量的評価法としてはクレアチニンを用いる指標と尿素を用いる指標の2種類があります。
1)クレアチニンを用いる指標
週当たりの総クレアチニンクリアランス(総Ccr )=週当たりの(腹膜Ccr +腎Ccr)
腹膜Ccr (L/日)=D/P-Cr×Vpd D/P-Cr は24時間排液中Cr 濃度(mg/dl)÷血清Cr 濃度(mg/dl)
Vpd は一日の総排液量(L)
週当たりの腹膜Ccr(L/W) =腹膜Ccr ×7
@身体の大きさは透析者によって異なるので、統一するため
体表面積で補正した週当たりの腹膜Ccr (L/W)=週当たりの腹膜Ccr ×1.73÷患者さんの体表面積
(図を用いて体表面積を計算します。)
腎Ccr=残腎Ccr(ml/min)=D/P Cr ×Vu ÷24÷60×1.73÷患者さんの体表面積
D/P Cr は24時間尿中Cr 濃度(mg/dl)÷ 血清Cr 濃度(mg/dl)
Vu は24時間尿量(ml)(24時間を1分当たりにするため、24で割りさらに60で割っています。)
A週当たりの腎Ccr (L/W)=腎Ccr ×60×24×7÷1000
(ml をL にするため1000で割り、1分を週にするため60×24×7としています。)
@とAの合計が総Ccr です。
2)尿素を用いる指標
週当たりの総KT/V =週当たりの(腹膜KT/V +腎KT/V )
腹膜KT/V=D/P urea×Vpd÷体重÷0.58 D/P-urea は24時間排液中の尿素窒素値(mg/dl)÷血清尿素窒素濃度(mg/dl)
Vpd は一日の総排液量(L)
0.58は生体の総体液量の指数
@週当たりの腹膜KT/V=腹膜KT/V ×7
尿素クリアランス(ml/min)=U/P urea ×Vu÷24÷60
U/P urea は24時間尿中の尿素窒素値(mg/dl)÷血清尿素窒素値(mg/dl)
Vu は24時間尿量(ml)(24時間を1分当たりにするため、24で割りさらに60で割っています。)
A週当たりの腎KT/V =残腎KT/V =尿素クリアランス×60×24×7÷1000÷体重÷0.58
(ml をL にするため1000で割り、1分を週にするため60×24×7としています。)
0.58は生体の総体液量の指数です。
@とAの合計が総Ccr です。
以上が、クリアランス(キレイにするという意味で、通常は1分間にどのくらいの量の血液を浄化できるかで表わします)の計算式です。
総体液量の計算にはWatson and Watson の式がありますが、複雑なので0.58を用いました。
これらを用いての至適透析の評価については今回、省略させていただきます。
計算は複雑で、実際の所は腹膜透析に携わるメーカーの方から簡単に計算できるソフトがでていますので、それを用いて行われています。
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質問者:ソーシャルワーカー(MSW) 老人保健施設勤務
患者の性別:男性 / 年齢:68歳 / 原疾患:糖尿病による腎不全
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老健相談員をしている者です。
先日、在宅にて腹膜透析をしている男性から入所の相談がありました。
半年ほどの入所後、自宅へ退所することを希望されております。
もし、この男性が入所した場合にかかる費用はどのくらいとなるのでしょうか?(透析液代など)
また、入所した際に必要な器具、機械などはありますか?
また、医師、看護師が行わなければならないことなどありますか?
なお、当施設は全室個室となっており、この男性がご自分の部屋で透析液の交換をする、とおっしゃっております。
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回答者:長寿クリニック 今田聰雄先生 |
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ご質問は腹膜透析をしている男性が入所したら、医療費はどうなるのかと言うことだと解釈しました。
住所が何処になろうと、今までと同じです。月に1,2回、今まで通りに、腹膜透析の管理施設に通院することになりますが、医療費に変化はないと思います。
機具も今までと同じものを使われては如何でしょうか。バック交換を無菌的に行う機具とか、自動化腹膜透析をおやりであれば、自動腹膜透析装置を使いますが、それも同じです。
つまり、特別な機具は不要と云うことになります。管理施設受診時には医師・看護師は必要ですが、それ以外には医師・看護師のすることはありません。
貴施設に入所後は個室であり、そこでバック交換を行うのであれば、ご自宅よりもっと安全ではないでしょうか。独りでもできる安全な在宅透析がCAPDです。
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質問者:看護師
患者の性別:女性 / 年齢:70歳 / 原疾患:慢性糸球体腎炎
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PD歴1年の方です。
BUN、P、Kなどの結果や除水不全はありませんが、PETの結果がHighでした。(昨年はHigh average)。
血清学的に問題なくても、透析不足と考えてよいですか?
また、今、1.5%ブドウ糖液を1.5L 3回交換していますが、このような場合、
1. バック交換回数を増やすのか
2. 糖濃度をあげるのか
3. エクストラニールを使うのか
4. 透析液を2Lに増やすのか
どれが一番望ましいのでしょうか?
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回答者:長寿クリニック 大野卓志先生 |
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ご質問有難うございます。
PETの結果から判断すると溶質の除去は全く問題ないと思われますが、
除水量が明らかにマイナスバランスになっているのではないかと推測されます。
現在、1.5%1.5Lを一日3回交換で除水不全がないということは日中だけ液交換を行い、
夜間は空にされているのでしょうか。
残腎機能が十分にあり、尿量も保ててるのかもしれませんが、
胸部のX線で心拡大がなく、体液バランスが保たれているのでしたら
特に透析液のメニューを変更する必要はないと思います。
ただ、一日除水量が記載されていませんが、PETの結果とは相関しないように思います。
可能でしたらもう一度PET検査をされてはいかがでしょうか。
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