日本在宅透析支援会議
 | TOP | JSHDとは | 活動履歴 | 腹膜透析に関するFAQ(一般)| 腹膜透析に関するFAQ(医療関係者)| 在宅血液透析に関するFAQ | 私の意見 |

腹膜透析に関するFAQ(一般)

皆様から寄せられたご質問に対して、全国の顧問や幹事の先生方が回答致します。

ご質問は、こちらから受け付けております。
前へ                                 次へ

質問 質問者:女性 57歳

子宮筋腫の手術を15年程前にしています。
腹膜透析は腹部手術後は難しいと言われていますが、実際に不可能なのでしょうか。
回答 回答者:近畿大学堺病院 今田聰雄先生

腹部手術のためにCAPDができなとする理由は手術のために腹膜が癒着をして、透析液に触れる腹膜の面積が少なくなっている場合です。
あるいは、手術のために腹腔が狭くなり透析液が500mlぐらいしか入れられないような場合です。
子宮筋腫の手術は、筋腫の発生場所にもよりますが、必ずしもお腹を切らなければいけないと云うことはありません。
事実、私どもではCAPDを継続したままで、子宮筋腫の手術を(経膣的でしたが)行った経験もあります。
超音波検査か腹部CT検査で、腹腔の状況を調べてもらえば、CAPDが可能か否かはわかると思います。
古い話ですが、乱暴な方法として腹腔に生理食塩水を注入、1L以上が入ればCAPD、
特に自動化腹膜透析(APD=夜間寝ている間に機械を使って腹膜透析をする)は可能と判断をして始めたこともあります。
結論は、「可能」だと思います。


質問 質問者:女性 47歳
透析歴:CAPD 5年

体中の痒みがおさまらず、最近では、一日2〜3時間程度の軽い活動だけで、足の浮腫みが激しく、
大半を就寝してしまうことが多くなっています。
主治医からは、(除水は問題ないが)透析不足が原因、で、血液透析への移行を薦められ、昨秋シャントを作りました。
私としては、極力CAPDを継続したいと思い、「週1回の血液透析併用」を主治医にお願いしてみましたが断られてしまいました。
現在は、子供の受験などを理由に、「この春までは・・・」と移行を何とか待っていただいている状況です。
どうすればよいでしょうか?

回答 回答者:近畿大学堺病院 今田聰雄先生

CAPD歴5年で、下肢のむくみと痒みに悩んでいらっしゃるご様子。
5年の経過で、残存腎機能もほとんど無くなっている(1日尿量が400ml以下になる)と思われます。
主治医の指摘するように透析不足が考えられます。
CAPDを継続するためにはAPD(自動化腹膜透析=夜間機械(サイクラ−)を使って透析をする)に変更することが通常行われています。
最近は仰るようにCAPDにHDを併用する「補完療法:CAPDを2日間中止して、1日HDを行うのが通常」が行われています。
何故断られたのか (保険も認めていますので施設の都合としか考えられませんが)わかりませんが、
現時点では透析不足を補う最もよい方法であると思います。
十分な透析量が確保できますので、透析不足が原因の1つでもある「痒み」や、
除水は十分と云われても、むくむのは除水が不十分としか考えられないので、
その両者を併用療法で改善できると思います。
もう1度、相談とお願いをされてみては如何でしょう。


質問 質問者:男性 55歳

透析の準備のため入院しています。
ループス腎炎でクレアチニン6、BUN 60です。
腹膜に問題はないと言うことです。腹膜透析を希望していますが血液透析を強く奨められています。
シャントの手術日も決まりました。
血液透析だと今回はシャントを作って退院できるそうですが腹膜だと慣れるのに時間がかかるので透析に入るそうです。
いずれは透析になると思っていますがもしもう少し時間があるのなら食事療法などでがんばって先に延ばしたいと思うのでシャントを作って退院したほうが良いのか迷ってます。
アドバイスお願いします。

回答 回答者:近畿大学堺病院 今田聰雄先生

病状や現状の詳細が解りませんので、個人的にアドバイスやご返事をすると、質問者にも医療者側にも差し障りがあると、本会議の本意に反します。
申し訳ありませんが、一般論としてご返事を致します。内容をご検討の上でご判断、ご賢察下さい。

1.ル−プス腎炎由来の末期慢性腎不全で、透析導入のため入院。
担当医師?からは血液透析を薦められ、バスキュラ・アクセス(シャント)の造設の日も決まっている。
2.腹膜透析を希望しているが、なれるのに時間が掛かると云われている。
3.BUN値:60mg/dl,血清クレアチニン値:6mg/dlでありもう少し、保存療法で頑張りたいがシャントを作成すべきか。
の3点について、その診療施設や地域的な問題もありますので、こうすべきだとは云えないことをお断りして、
現在の一般的な考え方をお話しします。

1.われわれの所にも、ル−プス腎炎由来の末期慢性腎不全のために、9年前に他院で血液透析を開始した61歳の女性がいます。
6年前に、当院に転移後、通院と家庭の事情から、腹膜透析(いわゆるCAPD)に変更しました。
現在も、少量の副腎皮質ホルモン剤(プレドニン5mg/日)を服用中ですが、全身性エリトマト−デスの症状は出ていません。
CAPDは自動化腹膜透析(APD)を選び継続していましたが、6ヶ月前から除水量が少し減少(腹膜機能低下)したので、
週に1回の血液透析を併用し、その当日と翌日はCAPDは休みます。
一般的にはバスキュラアクセス(内シャント)を、血液透析導入前(約1カ月)に造設しておく方がよいとされています。
前述の女性は、先に血液透析(前医ではCAPDは出来ないといわれて、われわれの施設に転移しました)をしていましたので、内シャントが作られており、併用療法もスム−ズに行えました。

2.血液透析に対して、バスキュラ・アクセス(シャント)の造設を早めにしておくのと同様、腹膜透析(この場合CAPD)でも、開始予定の1カ月以上前に、
CAPDの準備のために腹膜カテ−テルを腹腔内に挿入、お腹の皮下にカテ−テルを埋め込んでおく方法(段階的CAPD導入法:SMAP法と云って、覚えやすいので有名です)を使います。
1週間(以内ですが)程度の入院で、その間に、CAPDのやり方を覚えてもらい、模擬的に練習もします。
ですから、1カ月後以上経って、症状が出て、いざ、CAPDを開始という時は、埋めておいたカテ−テルを掘り出して、直ぐに開始できます。
外来での処置(程度の手術?)ですから、入院など不要で、在宅透析の本領発揮と云うことになります。
CAPDは在宅透析ですから、安全で誰にでも出来なければ治療として薦められません。
したがって難しいことは何もありません。

3.末期腎不全(定義としてはBUN値:60mg/dl以上か,血清クレアチニン値:6mg/dl以上になったとき)の食事療法の指標の1つに、
BUNとクレアチニンの比が10:1になるように食事内容を指導することが求められます。
その意味では完璧な食事療法が行われています。
透析導入の条件はいろいろありますが、最も簡単な基準は、腎不全のために尿毒症の症状(通常は吐き気などの消化器症状が多い)が出たか、出る1歩前が理想です。
一般的には「BUN値が100mg/dl以上、あるいはクレアチニン値が8.0mg/dl以上で導入を考える」はあくまでも、目安ですから、
もうこれ以上食事や飲水あるいは運動の制限は耐えられないと言う状態になる1歩前が導入(透析開始)の時です。
それまでは検査値上で危険な状況(カリウムが6.5mEg/L以上とか、体重が3kg以上増加して、心不全・肺水腫の危険があるとか)にならない限り、頑張れると思います。


質問 質問者:女性 46歳

関節リウマチ発症後24年です。
腎機能低下で、2週間後に、腹膜透析の準備のために入院します。現在、夫、子供、室内飼いの猫3匹と暮らしています。
器具取付け後は、衛生面から、猫は飼わないようにと言われましたが、猫達は、闘病の心の支えであり、手放すことは考えられません。
猫を飼い続けながら、自宅で腹膜透析をすることは不可能ですか?
猫達は、定期的に予防接種と健康診断を受け、抜け毛等の掃除も、きちんとしています。
透析になることより、猫達を手放さなければならないことの方が、精神的ダメージが計り知れません。

回答 回答者:近畿大学堺病院 今田聰雄先生

ネコちゃんがCAPDを理解してくれるとよいのですが、そうもいかないと思います。
ペットに対するお気持ち(癒し効果は大切です)は十分理解できます。
結論として、動物からの感染を防御できれば、ネコでもイヌでも、同居することに問題はありません。それは小さな子供さん達でも同じです。
言って聞かせても無駄な場合が問題です。
特に、透析液を交換している場合と、自動化腹膜透析(APD:夜間寝ている間に、機械を使って透析をする)の場合に気を付けて下さい。
つまり、小さなお子さんもそうですが、ネコもイヌも物珍しければじゃれてきます。
透析液の交換中は感染の機会が最も高いので、そのことが問題になります。
また、動物に特有な細菌がいます。パスト−レラ ムルトシダと言う細菌は、ネコやイヌの口腔内にいる常在菌で、彼らには何の害もありません。
自動化腹膜透析をしている際、ネコがじゃれて、透析の回路を噛みました。その結果、パスト−レラ ムルトシダと言う細菌が腹腔内に入り腹膜炎が発症しました。
このような場合が問題です。
つまり、不潔にならないようにするなら、CAPDを行うからといって、動物との同居を禁止する理由はありません。主治医と十分話し合って下さい。


前へ                                 次へ

Copyrigt 2003-2006 Japan congress Support of Home Dialysis. All right reserved.