日本在宅透析支援会議
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腹膜透析に関するFAQ(一般)

皆様から寄せられたご質問に対して、全国の顧問や幹事の先生方が回答致します。

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質問 質問者:女性 20歳

ご質問 腹膜透析の排液量には正常値や異常値というものはあるのでしょうか??
また、なぜ排液は黄色くなるのか教えてください。
先生が腹膜透析か血液透析かを判断する条件はなんでしょうか。
何を基準に透析の種類を選ばれているのか教えてください。

回答 回答者:長寿クリニック 大野卓志先生

ご質問有難うございます。
腹膜透析の排液量に関してですが、腹膜透析液には、ブドウ糖濃度の異なる3種類の液とトウモロコシを原料としたイコデキストリン液があります。
透析液の種類や糖濃度、貯留時間によって排液量は増減しますので、正常値や異常値というものはありませんが、一般的には平均除水量(排液量から注液量を引いた量)は1.5%ブドウ糖透析液で150ml、2.5%ブドウ糖透析液で450ml、4.25%ブドウ糖透析液で950mlと言われています。しかし、4.25%の高濃度透析液は腹膜を傷害する恐れがあるので頻回使用はすすめられません。
その替わりのイコデキストリン透析液では500ml以上の除水量が得られることが多いようです。
次に排液が黄色であるのは、肝臓から分泌される消化液である胆汁中に含まれて運ばれてくるビリルビンという色素のためです。
最後に透析療法の選択基準に関してですが、ご存知のように透析療法には、腹膜透析、在宅血液透析、施設血液透析があります。
これらの治療法についての情報を患者さんに十分に提供することが一番重要なことですが、一般的には、残存腎機能の保持に優れ、時間的な束縛が軽く、社会復帰しやすい腹膜透析から開始することが最も望ましいと思います。
しかし、患者さんの意志や家族の協力が得られない場合、あるいは下腹部の手術の既往があるため、腹膜の癒着の程度により十分な透析ができない可能性がある場合やその他の医学的な要因により、腹膜透析を回避する場合もあります。
いずれにしても患者さんにとって最も有用な透析治療を選択する、あるいは組み合わせることが重要であると思います。


質問 質問者:男性 63歳 

ご質問

腹膜透析を13年間し、一年前に血液透析に切り替えました。
その後CAPDの液を入れなくても、二日に一度くらいの割合で除水の量が約1500出ます。
このまま放っといても良いのでしょうか?
なにか止める方法があるのでしょうか?

回答 回答者:長寿クリニック 大野卓志先生

ご質問有難うございます。
現在もCAPDカテーテルが挿入されていて、注液をされないのに一日約750mlの排液が得られるわけですね。通常では50ml程度は腹腔内に存在しますが、750mlは多すぎるように思います。
排液の性状や全身状態、その他の情報がありませんので、腹腔内に水分が貯留した状態、すなわち、腹水について説明します。
腹水はお腹の中で腸が動く時に潤滑油の働きをしています。通常は一日に700ml〜800mlが産生され、同量が吸収されることで一定の量を保っていますが、産生される腹水よりも吸収される腹水が少なくなると腹水の量は増加します。
その原因としましては
@腹膜疾患:腹膜の炎症で腹水の産生量が増加する場合。
A肝臓の疾患やネフローゼ症候群:門脈といわれる血管の圧力が上昇することにより、また、アルブミンというタンパク質が減少して血管に水分を引き戻す力が弱まることにより腹水の吸収が減少する場合。
B心臓の疾患、あるいはリンパ管に原因があるため、水分の吸収が妨げられる場合。
などが考えられます。

原因によって治療法は違ってきます。主治医の先生に他に腹水の原因となるような病気はないのかも含めてよく相談して下さい。



質問 質問者:男性 77歳 透析歴3年 

ご質問 3年前に腹膜透析を始めた父についてですが、現在 一日6回の透析していますが 手足の指先の壊死や認知症の兆候も見え 透析や排泄や食事の世話も母が一人でおこなっています。腹膜透析の患者さんは 最期まで自宅で家族が世話をするしかないと病院側からは言われているのですが どこの病院でも また介護施設などでも受入れてもらえないものでしょうか?
回答 回答者:長寿クリニック 今田聰雄先生

 ご質問は現在の医療制度の中の歪み、しわ寄せのように思われてなりません。「在宅医療」と声高に云われるのに制度が追いつかない面があります。
さて結論です。どのような治療法でも最期までその治療法だけを続けなければならないと言うことはありません。必要に応じて、治療法は選択されるべきですものです。
ご諮問の「病院側の話」は事実であれば腹膜透析(CAPD)の支援施設としては如何なものでしょうか。多分双方の誤解であろうと思われます。
お母様の苦労には心から「ご苦労様」と申し上げて、「私見」を申し上げます。
お母様お一人では大変でしょうから、ご家族で助け合って、思う存分にお父様の介護してあげて下さい。
「これ以上、在宅療法を続けると家族全部が参ってしまうし、父の看護は思う存分にしてきたので、悔いはない」と家族全員が仰るなら、入院による治療を選ぶことが出来ると思います。
腹膜透析を管理して貰っている施設の担当者と相談してみて下さい。ご家族の看護以上の看護は、如何なる医療施設でも出来ないこと、療養型の病棟になるかも知れないこと、
また場合によっては血液透析に変更されるかも知れないことは了解して頂かなければなりません。


質問 質問者:男性 49歳 静岡県

 クレアチニン4.63、BUN45.6です。主治医からそろそろ透析の準備(シャントの作成)をするよう言われています。しかし、私は腹膜透析を希望していますが、@当院ではPDは出来ない。A透析施設が近くにない様な国ではPDが有効だが、日本では必要ない。BHDほど効果がない。との理由で拒否されてしまいました。それならば、PDが出来る病院を紹介して欲しいと言うと、とりあえずHDを始めて、その後考えれば良いと言われています。主治医から紹介してもらえないとなると、どのようにPDを行っている病院を探せばよいのでしょうか?
回答 回答者:長寿クリニック 今田聰雄先生

 在宅透析が普及しない理由の大きな部分が見えるような気が致します。残念なことです。
在宅血液透析は確かに操作を覚えるまで、難しいところもありますが、腹膜透析(PD;現在行われているのはPDの中でもCAPDです)は簡単に出来ますし安全です。
特に、透析療法の最初に行う治療法としてお勧めできます。多分主治医の先生はPDのご経験がないのでしょう。
 余計なことかも知れませんが、クレアチニン値が4.63mg/dl、BUNが45.6mg/dlで透析導入の準備は早すぎるように思います。
 腎臓が悪くなった原因(腎不全の基礎疾患)にもよりますが、年齢から考えても、クレアチニンが5.0mg/dlに近づいた、今から腎不全の本格的な治療(食事の制限や薬物療法)を開始するのが普通です。一般的には、治療の強化によって、糖尿病性腎不全であっても1年以上透析導入を先に延ばせます。お腹の手術をしていてもPDは可能です。
 腎不全の基礎疾患が多発性のう胞腎で腎臓が大きくなりすぎている場合は、お腹に透析液を入れておくことが難しいためお勧めできない場合もあります。
確かにPDはHDほど老廃物を除去する効果は少ないのですが、だからこそ、透析導入の腎機能がまだ残存している時期におやりになることです。
 また、どうしてもPDでは効果が少ない時は、HDを併用しては如何でしょう。腎不全の治療法は1つではありません。その時最もご自分の生活様式に合った治療法を選ぶべきだと思います。
PDの管理が可能な透析施設は沢山あります。



質問 質問者:女性 39歳 兵庫県

  現在腹膜透析を検討しております。
私は腹部に、約10年前に実施した、腎臓移植の手術痕があります。(2か所)
腹部に手術痕がある場合、腹膜透析は不可能だと言われました。
しかし、HPを拝見すると可能と書かれております。
実際、可能なのでしょうか。可能かどうかは、どこで調べていただいたらよいのしょうか。
私は、現在仕事に就いておりますので、腹膜透析が可能だと非常に助かるのですが。

回答 回答者:長寿クリニック 大野卓志先生

ご質問有難うございます。

腎臓移植の場合、腹膜という臓器を覆う膜を傷つけることはありませんし、移植腎は骨盤の中(腸骨窩)に留置します。したがって余程のことがない限り、腸管が癒着して透析液に触れる腹腔内の面積が少なくなることはありません。

腹膜透析のカテーテルは通常、臍下から挿入し、出口部を左右の下腹部に作成することが多いのですが、ご質問の通り、手術創は避けます。移植による手術痕は右下腹部にあるかと思いますが、カテーテルの出口は最近では上腹部や胸部に作成する施設も多数みられます。

結論としましては腹膜透析を施行することは可能であると思われます。可能か否かを調べる方法として、私どもは腹腔穿刺をして1.5L〜2.0Lの生理食塩水を仮に注液して試したことがあります。主治医の先生とよく相談してください。

質問 質問者:愛知県

5才の息子が今年中に腹膜透析を行うと医師に言われました。
医師からはクレアチニンが一年半くらいの期間で1.18→1.23→1.31→1.33→1.48→1.46→1.56となったので順調に(?)悪くなっているからといわれました。
子どもの場合はこのくらいの数値で透析導入になるのが一般的なのでしょうか?いろいろな情報を探してもこどもの透析については載っていなくよくわかりません。透析の基準となる表に症状を照らし合わせても、該当しない項目が多いので本当に透析しないといけないのか疑問です。
回答 回答者:長寿クリニック 今田聰雄先生

小児腎臓病の専門家に確認をしていたため、回答が遅くなったことをお詫び致します。
ご心配なことと思いますが、お子様は透析療法で今後をしのいで、チャンスを見つけて腎臓移植をすることが基本的な治療方針になると思います。
さてご質問の透析導入(腹膜透析の開始)時期の件です。
成人の場合(16歳までが小児科というのも、現代の青少年の体格を考えると可笑しいとは思いますが)は血清クレアチニン値(S-Cr)が3.0mg/dlを超えると腎不全(腎臓の主な働きである血液を浄化する力、クリアランスでは、24時間クレアチニンクリアランス<24Ccr>が30ml/分:1分間に80mlの血液を浄化出来る、つまり24Ccrが80ml/分以上が基準値で、30ml/分以下は腎不全)といいます。
腎臓の働きが悪くなると、老廃物の代表であるS-Cr値が基準値である1.0mg/dlを超えて高くなりますが、
S-Cr値が3.0mg/dlまでは回復も可能であるとして、腎不全ではなく「腎機能低下」と呼んでいます。
つまり子供さんはまだ、「腎機能低下」の病期です。成人であれば、腎不全、つまりmS-Cr値が3.0mg/dlを超えてからが、本格的な腎機能の保存療法期であり、
食事療法を中心として、血圧、感染症、貧血などに対する薬物療法を強化して出来る限り透析導入を遅らせることが治療方針です。

S-Cr値が1年半で1.18から1.56mg/dlになった。年内の腹膜透析ということですが、成人の場合の腎不全の進行を見る指標に1/S-Cr値があります。
こまかく検査がされているので、1年半前の1/S-Cr値である0.85をY(縦)軸にプロットして、X(横)軸に1年半前の日付をプロットします。7回測定されているので、順次最後の最近の1.56、つまり0.64までを方眼紙にでも書いてみて下さい。プロットした点で大まかな線を引いて下さい。右下がりの線が引けると思います。
その線が、X(横)軸と交わるところ、日付になりますが、それが腎死、つまりは透析の開始日です。ざっと見てもまだ40ヵ月以上先のような気がします。

成人とは違って、管理の最も難しい5歳です。腎機能が低下した原因疾患(逆流性腎症とか、低形成腎とか)がわかりませんので、確かなことは云えません。
しかし、小児でも成人でも、透析導入の基本的時期は、尿毒症症状の発現する一歩前だと考えます。
血圧が高いとか、むくみ(全身性浮腫)で困るとか、貧血症状、食欲不振などなど、腎機能を少し早めに支える必要があるのなら、透析も必要でしょうが、如何でしょう。

腹膜透析の場合、腹膜カテ−テルを腹部に留置する必要があり、導入の1〜2ヵ月前に留置して、慣らしておく方法(SMAP法)がとられます。
それを考えても、またよほどの事情を考えても、S-Cr値が3.0mg/dlを超えてから導入を考えるのがが一般的であるように思います。
詳しい病状がわかりませんので、一般的な回答になりましたことをご容赦下さい。なお、インタ−ネット検索が可能なら、「小児PD研究会」で見られるとよいと思います。

質問 質問者:男性 33歳 兵庫県

APD+CAPD導入中ですが、血圧が常に200以上と高く、降圧剤3種類服用しても効果がありません。
飲水制限で体重を落とそうとしても、ある一定体重で安定してしまい、それ以下にはなかなか落ちません。
そこで、月一回程度のHD併用を医師に申し出たのですが、併用は保険請求上無理だと断られました。
ネット上には併用に関する文書も多くあり、実際にされている方も多いように見られるのですが、近頃の法改正などで併用不可になったといったことがあるのでしょうか?どのように医師に相談すればよいかご助言をお願いします。
回答 回答者:長寿クリニック 大野卓志 先生

ご質問有難うございます。慢性腎不全の高血圧の80%は体液量すなわち塩分と水分依存性です。血圧が高ければ、まず塩分を制限して、飲水量を減らしてDW(透析者の乾燥体重つまり至適体重)を下方修正すべきです。ご質問の内容からは現在の体重がDWを超えている状態であると思われます。飲水量に対して、一日の除水量や残存腎機能に伴う尿量は充分確保できているのでしょうか。APD+CAPD(一般にCCPDと言います)の処方内容がわかりませんが、ブドウ糖の濃度や貯留時間によっても除水量は変化しますし、トウモロコシを原料としたイコデキストリン液も除水量を確保できますので、処方内容を検討されることも必要かもしれません。また、腹膜機能が低下しているために、老廃物の除去や除水が不十分なのでしたら腹膜透析の継続も困難になるかもしれません。腹膜機能には問題がない状態で、現在の処方以上に変更が困難な場合は血液透析、場合によっては限外濾過(ECUM:イーカム)を併用する必要があります。

一定の体重を維持できているのでしたら数回の血液透析の併用でDWまで除水を行えば、血圧も下降し、以後は腹膜透析のみの管理も可能かもしれません。

また、血液透析と腹膜透析の併用療法に関してですが、併用療法に関しての統計調査が行われていないため正確なことは言えませんが、現在、国内では腹膜透析患者さんの約20%が併用療法を施行していると思われます。保険請求に関しては、血液透析と腹膜透析の両方を請求することはできません。従ってどちらか主となる治療法、この場合は腹膜透析療法の枠で行い、血液透析に関しては材料費のみが請求可能となります。血液透析が主であると判断すれば腹膜透析の透析液など材料費のみが請求可能となります。

しかし、併用療法は全ての患者さんに適応があるのではありません。あなたの全身状態を一番よくご存知なのは主治医の先生です。併用療法の適否だけではなく、日常生活での問題点(食事や睡眠、ストレスなどがもしあればですが)や今後の治療方針など今の悩みをもう一度、素直に主治医の先生に相談して下さい。
質問 質問者:男性 54歳 
4月4日に腹膜透析の手術をしたのですが10日後に透析液を注したのですが大量に漏れてしまいました。先日4月26日に再度注入したのですが相変わらずもれてしまいます。先生に聞いてもなぜかわからないとあいまいな返事です。再手術をするか血液透析にするか決めかねています。
病院側は結論がまだ出ません。今後どのようにしたらよいかアドバイスをお願いします。また私自身は腹膜透析を希望します。
もし再手術になるとどのような手術をするのでしょうか?
また一ヶ月ぐらいの入院が必要なのでしょうが?よろしくお願いいたします。
回答 回答者:長寿クリニック 大野卓志 先生
ご質問有難うございます。
カテーテルの挿入術を行い、10日後に透析液を注入して透析液の漏出(リーク)を認め、約2週間後に再度、透析液を注入してもやはり、リークを生じているのですね。
まず、どこからのリークかですが、最も可能性が高いのはカテーテルの腹膜挿入部(腹膜とは第一カフでカテーテルは固定されています)からと思われます。その次に考えられるのが、カテーテル自体に損傷がある場合です。
通常、約1か月で腹膜とカフの癒合はある程度完成するといわれています。今回の再開期間は手術後、約3週間ですのでほぼ妥当だと思いますし、おそらく少量の透析液(500ml程度)で再開したのだと思います。それでも、リークが多量ということですので、カテーテル自体の損傷の可能性は低いと思われます(カテーテル先端からビタミンB12のような色のついた静注可能な薬物を注入して漏れて来る液が赤ければカテーテルからのものですのでカテーテルの損傷を判別できます)。
ご質問を拝読させていただく限り、CAPDの初回導入で血液透析はしていないと思います。しかし、血液透析からCAPDに移行されたのであれば、血液透析の透析液ナトリウム濃度が高いと、前日あるいは直前まで血液透析を行ってから腹膜透析液を注入すると、腹膜透析液のナトリウム濃度が低いため腹壁浮腫(男性なら陰嚢浮腫を発生させることもあります)が発生して腹壁の水分が多量にカテーテル出口部から浸出します。この防止にはCAPD開始時に血清ナトリウム濃度を138mEq/L以下にすることと、われわれは「塩抜き」と称してブドウ糖などを置換液としてECUMを行い、ナトリウム濃度を138mEq/L以下にしています。
透析を開始されるまでにどの程度の余裕があるのかはわかりませんが、今後も腹膜透析を希望されるのであれば、段階的透析導入法であるSMAPを行うのも良いかもしれません。
SMAPは腹腔に挿入したカテーテルを出口を設けずに皮下に埋没し、一定期間後にカテーテルを引き出して出口を作製します。利点として、@腹膜とカフの癒合が完成するため透析液のリークが生じにくい。A皮下カテーテル周囲の線維性癒着が完成されるのでカテーテル感染症が減少する。B入院期間が短い(1日から7日)、などです。
出口を作製する時にもう一度、手術をするのですが、透析開始時から十分な量の透析を施行することが可能となります。
今回のケースからは、カテーテルの埋没期間は1〜2か月が妥当と思われます。
その間に透析治療が必要な場合、シャントを作製して血液透析を開始して、腹膜透析が順調に経過すれば、腹膜透析への移行かあるいは腹膜透析との併用療法も可能であると思われます。併用療法ついてはここでは詳細は述べませんが、いずれにしても、適切な時期に透析治療を開始するために、主治医の先生とよく相談して下さい。
質問 質問者:埼玉県 45歳 男性 透析歴5年
ご質問: 71歳の母についての質問です。
@腹膜透析に不適となるのは、どういう人ですか? 症状が軽い人でなければ駄目という話もききましたが。
A透析開始前の検査で腎臓がんが見つかり、左腎を摘出したことがあります。通常はわき腹を切って行うところ、理由はよくわからなかったのですが正面にメスを入れています。腹膜透析の障害となりますか?

 5年前に糖尿病性腎症から血液透析開始。何度もシャント閉塞を繰り返し、もう脚にシャントを作るか脚の付け根から長期留置カテーテルを入れるしかないという状態です。
回答 回答者:長寿クリニック 大野卓志 先生
ご質問有難うございます。
患者さんの現在の全身状態がわかりませんので一般的な回答になりますことをご了承下さい。
腹膜透析の特徴としましては

1、毎日透析を行うので体に優しい。
2、循環器系(心臓)に与える影響が少ない。
3、食事制限が緩和される。
4、シャントが不要であり、穿刺の痛みがない。
5 家庭や職場で治療ができる。社会復帰がしやすい。
6、定期通院は月に1回から2回ですむ。
 などがあげられます。腹膜透析が絶対に行えない条件は基本的にありません。腎臓の摘出術を含め、腹部手術の既往のある方でも十分可能な治療法です。(手術の内容にもよりますが、3か月程度経てば問題ないと思います。)
 腹部の正中正面で切開していても腹膜透析用のカテーテルの挿入場所(正中線上を使うことはありません)を考慮すれば問題はないと考えます。
 ただし、腹部の手術の既往があるため、腹膜の癒着の程度により十分な透析ができない可能性はあります また、その他の医学的な要因のために腹膜透析を回避する場合もあります。
主治医の先生とよく相談して下さい。
質問 質問者:千葉県 年齢 38 性別 男 透析歴 6ヶ月
ご質問: 3月より腹膜透析で順調でした。7月軽い腹膜炎を起こし、治療後即、注廃液が出来なくなりました。カテーテルが右上にはねていました。位置を戻してもらいましたが、結局できず入れ替えました。膜?で詰まっていました。新しいカテーテルも右左にはねてしまい、廃液が出来たり、出来無かったり。
よくあることなんでしょうか?
飛び跳ねたり、歩いたり、下剤掛けていますがなかなかうまくいきません。
また、やむ終えず断念する時、腹膜が洗えないのがとても心配です。
回答 回答者:長寿クリニック 大野卓志 先生
ご質問有難うございます。
注排液不良の原因としましては

1.      フィブリンや凝血塊によってカテーテルが閉塞する
2.      大網などの組織がカテーテルの小孔に浸入して孔をふさいだり、先端部を包み込む
3.      カテーテルの位置異常
4.      便秘による膨隆した腸管によるカテーテルの圧迫
5.      腹膜機能の低下
6.      液漏れやヘルニア
7.      塩分の摂取過剰や脱水、低蛋白になると浸透圧の関係から除水不良になる
などが考えられます。
今回の場合、腹膜炎後に注排液とも困難になったのはカテーテルの位置異常に加えて、大網などの組織がカテーテルの小孔に浸入してふさいだり、先端を包み込んだためなどが考えられます。
カテーテルの入れ替え後には、ご質問の内容からは注液に関しては問題なく、排液が十分に出来ていないのだと理解させていただきます。
原因としましてはご指摘通り、カテーテルの位置異常と大網などの組織がカテーテルの先端に絡んでいるのだと思われますが、不完全閉塞の状態ですので、飛び跳ねたり下剤の内服や浣腸の施行、さらには生理食塩液のフラッシュなどの操作を反復しているうちに自然に回復する可能性もありますし、スタイレットを挿入して先端の位置移動を試みる方法もありますが、カテーテルの閉塞状態と再開通の可能性についてはカテーテルに造影剤を注入して、その位置や周囲への流出の状況を確認された方がよいと思われます。
もし、再度、カテーテルの入れ替えが必要な場合、カテーテルの位置異常とそれに伴う大網の巻絡によるカテーテル閉塞を予防するために、カテーテルを腹腔内に留置する際にナイロン糸で輪を作って、その中に入れることで固定している施設もあります。
最後に腹膜が洗えないとのご質問ですが、カテーテルを抜去した後に腹腔内の洗浄を出来ないという意味でしょうか。基本的には腹膜炎を発症していますが、その後の排液が問題ないのであれば腹膜透析の期間から考慮すると洗浄の必要はありません。また、もし、洗浄が必要だとしても通常の開腹手術と同じで洗浄操作は可能ですので心配はありません。
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