日本在宅透析支援会議
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腹膜透析に関するFAQ(一般)

皆様から寄せられたご質問に対して、全国の顧問や幹事の先生方が回答致します。

ご質問は、こちらから受け付けております。
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質問 質問者:男性 62歳

カテテール出口部、H17-6-14にハイキングに行った時バンドで擦り、膿が出だした。
最近肉芽が大きくなり消毒する時、肉芽が潰れ血が出る。
消毒後ガーゼを出口部に当てると擦ってよくないと医師より指示で、出口部を浮かせてガーゼを当てた所、肉芽が大きくなり痛みが出てきた。
肉芽を潰すと痛みが出ないので以前は潰していたが、潰さないほうがよいのでしょうか?
また、消毒以外に出口部に薬は付けていません。塗り薬はないのでしょうか?
出口部は治らないのでしょうか?

回答 回答者:長寿クリニック 大野卓志先生

カテーテル出口部の感染はCAPD療法の厄介で非常に煩わしい合併症の一つです。
一般的な対処法としては、
  1.局所の洗浄と消毒を頻回(1日3〜4回)に行う
  2.抗生物質入りの軟膏・クリ−ムを局所に塗る。さらに病状によっては感受性のある抗生物質を静脈あるいは筋肉注射、経口服用または局所注射など
  3.切開排膿などの外科的処置
が行われています。

 1.に関して:出口部の消毒には、今、現在何を使われていますか?ポピドンヨード(イソジン)を使用している方が多いと思いますが、生理食塩水で洗い流す方法や、我々の施設で用いている酸性水による噴霧、洗浄も効果的です。
 2.に関して:出口部に対する塗り薬としては、ポピドンヨード軟膏(イソジンゲル)やゲンタマイシン軟膏の局所投与が有効な場合があります。また治りにくくて有名なメチシリン耐性ブドウ状球菌(MRSA)が検出されたらムピロシン軟膏が有効です。さらに病状によっては膿性分泌物の培養検査を行い感受性のある抗生物質を、経口投与、静脈注射、筋肉注射などによって行うこともあります。
 3.に関して:上記の治療で1カ月以上経っても治癒しない場合、あるいは、感染が腹壁のカフにまでおよぶ場合には外科的処置を考慮する必要があります。

ご質問の肉芽は潰さないほうがよいのか否かですが、硝酸銀による焼灼により治癒を早める可能性もあります。
しかし完治、あるいは、除去することは困難で再発もしばしばみられるのであまりお勧めはできません。
また、潰して「込めガ−ゼ」を入れる方法もあります。
やはり主治医と相談をされるのが最もよい方法であると思います。
出口部を浮かせてガーゼを当てたというのは、逆に固定が不十分でよけいに患部とガーゼが擦れる可能性もあります。
カテーテルを確実に固定することが出口部感染症の予防と治療に最も大事なことですから、もう一度ご確認下さい。


質問 質問者:男性 45歳 CAPD歴5年 HD歴2年

腹膜透析を施行後に、透析不足のため、血液透析に移行しました。
カテーテル抜去前で腹膜洗浄を毎日行っていますが、フィブリンが毎日たくさんでてきます。
これはそのまま様子を見ていてよいのでしょうか。主治医の先生はヘパリンを使ってみようか、と言われています。
フィブリンが出てくる理由や減らす方法があれば教えてください。

回答 回答者:長寿クリニック 大野卓志先生

 腹膜透析を長期間施行されている方や腹膜の劣化あるいは腹膜炎を繰り返したことのある患者さんは、被嚢性腹膜硬化症という腹膜透析療法の重大な合併症の予防のために
カテーテルをすぐに抜去せずに一定期間留置し、腹腔洗浄が行われています。
 腹腔洗浄を行う理由は、1.中皮細胞の再生や機能の回復 2.腹腔内凝固線溶系の正常化 3.炎症増悪因子のドレナージ(洗い流す) 4.腸管の癒着を防止する などを目的としています。
 ご質問にあったフィブリンは血液の凝固に関わるタンパク質ですが、凝固、線溶系の亢進により出現すると思われます。
ヘパリンはフィブリンの溶解作用はありませんが、新しい血栓の形成阻害を行うことで抗凝固作用があり、使用する意味は十分あると思われます。
 次に、腹腔洗浄に関してですが、毎日洗浄されてもフィブリンが多量に出るということですので一日2回行うかあるいは、1回の洗浄を2回続けて行うのも一つの方法ではないかと考えます。
洗浄液は何をご使用でしょうか。通常では、低濃度透析液を使用していると思いますが、もし、酸性の透析液をご使用なら中性液のご使用をお勧めします。
また、酸性液の洗浄では効果がみられなかったのですが、ブドウ糖非含有中性液(生理食塩水1Lにメイロン2mlを加えpHを7.4に調整)を用いた洗浄を行い、
腹腔内凝固線溶系の亢進が改善してカテーテル抜去後も問題なく経過している患者さんの報告もありました。
患者さんの現在の全身状態や腹膜機能を一番ご存知なのは、主治医の先生ですので、今後の治療方針に関して主治医の先生とよくご相談下さい。


質問 質問者:女性 68歳 

在宅療養で管をつけたままで、抜けたりすることは無いのですか。
またその時の対応はどうすればいいのですか。

回答 回答者:長寿クリニック 大野卓志先生

ご質問の管というのは在宅腹膜透析(CAPD)のカテーテルのことだと解釈してお返事させていただきます。
CAPDカテーテルの挿入の手術を受けられたのだと思いますが、一般に使用されているカテーテルには、1個か2個のダクロンカフ(化学繊維でできていて、抜けるのを防ぐストッパー)が付いています。
1番目のカフは腹膜に固定されます。2番目のカフは皮下に作られたトンネル部にありますが、皮下組織とくっついてカテーテルの固定が強固になります。
よって、抜けることはありません。
ご質問が在宅で栄養を補うための管(カテーテル)のことであれば、挿入場所や固定の仕方などもわかりませんので主治医の先生にご相談して下さい。


質問 質問者:女性 41歳 

カテーテル埋め込みの手術をしました。
お腹の傷の治りはまずまずですが、下腹部(膀胱、肛門のあたり)が退院してからほとんど毎日痛くてたまりません。歩く事も不自由です。
担当の先生に聞くと「そのうち慣れます」というだけで一向に慣れません。「導入を早くすれば痛みがとれます」とも言われましたが、私としては1日でも遅らせたいのです。
導入になってからも痛みがあるという方もみえるようですし、腹膜透析があわなかったのではないかと少し後悔しております。
痛みがひどい時は ロキソニンを半錠飲んでいます。

回答 回答者:長寿クリニック 今田聰雄先生

腹膜透析の段階的導入法(いわゆるSMAP)として「腹膜カテ−テル埋め込み手術」を受けられた。
その後下腹部、特に「おしりの内側;肛門と膀胱の間」に耐えがたい痛みがある。
原因は「腹腔内に入れられたカテ−テル」の先端が腹腔内の最も深い位置の「ダグラス窩」に到達し、動くたびに周囲の組織を刺激するからです。
この「ダグラス窩」にカテ−テルの先端が達することが、腹膜カテ−テル挿入術の最良の手技の証拠です。
過去には、この感じがあったら、うまく挿入できたとして、直ちに腹膜透析液を注液して腹膜透析が開始されました。
ところが、SMAP法は4週間以上、いわゆる「腹壁にカテ−テルがなじむ」まで留置をします。
腹膜のカテ−テルの挿入口からダグラス窩までの距離は人によって異なるため、少し短めの人、丁度良い人、少し長めの人、がいることになります。
前二者は何もありませんが、三番目の人は、痛みが出ます。
透析液を腹腔に入れると、お腹がふくらんだ分、カテ−テルがダグラス窩の奥から離れて、刺激がなくなり痛みも消えます。「導入すれば痛みが消える」という根拠です。
「透析の開始」は検査の数値よりも、消化器症状を代表とする「症状発現」がよいのは当然ですが、例えば、BUN値が100mg/dlを超え、血清クレアチニン値も10mg/dl以上になっていれば、
食事療法や運動制限を頑張って、導入時期を延ばすよりも、1日に3回交換とか、透析液量を少なくするとかで、CAPDを開始され、
さらに残存する腎機能を長期に温存することを選ばれる方がよい場合もあります。
1日でも遅らせたいお気持ちはわかりますが、必ずしもよい結果を出さない場合もあります。
また、「痛み」が消えることも、「カテ−テルの位置が変わる場合」あります。SMAPは2週間以上であれば、さらに長期間の埋没期間と比べて、よりよい長所はありません。
ロキソニン半錠の服用を打ち切って導入をする時期の目安ではないでしょうか。
CAPDが合わないのではなく、カテ−テルがあまりにもよい位置に留置されたからだと思います。


質問 質問者:男性 79歳 透析歴 1年

廃液の処理は、トイレに流さなくてはいけないのでしょうか?
キッチンの流し・洗面台・風呂場等では駄目なのでしょうか?
キッチンのホーローが傷むというのは本当でしょうか?

回答 回答者:長寿クリニック 大野卓志先生

排液がホーローを傷めることはありません。
排液の処理の場所も特にトイレに限ったことではありませんがトイレに捨てているケースが多いようです。
また、使用済みバッグの処理についてもあわせてお話いたします。
CAPD排液をトイレに捨てた後、使用済みバッグを小さく折りたたんでビニール袋などに入れます。
これをごみ袋に入れてごみの収集所に捨ててください。
CAPDのプラスチックバッグは地域によって不燃物/可燃物の分別が異なります。
各市町村の分類に合わせて捨ててください。


質問 質問者:女性 57歳

現在、クレアチニンが9.2です。医師からは透析の開始を勧められていますが、とくに自覚症状もないため今の段階では透析を考えていません。
ただ、透析開始にあたり、症状のない段階での透析開始と尿毒症の症状が出始めた段階での開始では、導入後の体の状態や生活に違いはあるのでしょうか。
また、最大でクレアチニンの値がどれくらいまでなら透析の開始を遅らすことができるのでしょうか。よろしくお願いします。

回答 回答者:長寿クリニック 大野卓志先生

透析方法としては腹膜透析(CAPD)を予定されていると解釈してご質問に答えさせていただきます。
一般的には尿素窒素が100mg/dl以上かクレアチニン値が8.0mg/dl以上で透析の導入を考えます。
しかし、実際のところ、自覚症状が全くないのに透析を導入することは少なく、尿毒症の症状(嘔気、全身倦怠感、食欲低下、かゆみなど)が出現した時に開始することが多いようです。
ただ、急に尿毒症の症状が出現する可能性もありますので、できましたらCAPD を予定されているのなら段階的導入法でSMAP法という手術をしておいた方が良いと思われます。
この手術は腹膜カテーテルを腹腔内に挿入後、皮下にカテーテルを埋め込んでおく方法で、いざ、CAPDを開始という時は埋め込んだカテーテルを引き出して出口を作製して直ぐにCAPDを開始できます。
さて、主治医の先生が透析の開始を勧められている理由は生命予後の改善には、CAPDの早期導入による残腎機能の保持が重要だからです。
残腎機能の保持は血液透析よりも腹膜透析の方が良好であると言われています。
さらに、PD開始後に透析量を十分確保することよりもより早期の透析導入による残腎機能の保持の方が重要であると考えられています。
以上から、なるべく早期に透析を開始された方が望ましいと思われますが、自覚症状が出現するかその一歩手前で導入されたらいかがでしょうか。
クレアチニンは筋肉からの老廃物で、患者さんの筋肉量や運動量により値は異なりますので透析開始の数値を厳密に設定することは困難であると思います。



質問 質問者:女性 45歳 透析歴10日

家族が入院中で腹膜透析を始めました。
1日4回の交換を行っていますが、体重が増え足や顔も少し浮腫んでいるようです。
看護師さんに聞いたら「腹膜透析を始めたばかりなので最初は良くあることです。お腹が透析液を入れたので驚いているんですよ。」と言われました。
透析液の入れ始めは不安定なんでしょうか?

回答 回答者:長寿クリニック 大野卓志先生

ご質問有難うございます。腹膜透析を開始してしばらくは、私たちの施設でも除水が不安定で体重が増加したり、むくみが出現する患者さんがおられます。
経験的には、腹膜透析開始後、3か月ぐらいで安定状態になる印象を持っています。除水が不安定な理由はさだかではありませんが、非医学的にいえば、看護師さんがおっしゃるように本来入れる必要のない腹腔内に透析液を入れて急にはお腹が順応できないからだと思います。
患者さんの残腎機能(尿量)がどの程度維持されているのかわかりませんので腹膜透析でどのくらい除水が必要かはわかりません。
ただ、カテーテルの先端がダグラス窩に挿入されていて、注入した透析液がある程度排液されているのでしたら除水量を増やす方法がいくつかあります。
一つは、夜間睡眠中に自動的に腹膜透析をする方法(自動化腹膜透析:APD)で一日4回交換のCAPDよりは除水を得られることが多いです。また、透析液の濃度を変更することや貯留時間を変える(たとえば一日4回交換でも夜は排液だけして翌日あさに注液から始め夜間は腹腔内を空にしておく)ことによっても除水量をより得られることがあります。
いずれにしても心臓の負担がなく、血圧も安定しているのでしたら経過をみていくことも可能であると思います。
患者さんの体調がわかりませんので詳しくは主治医の先生にお尋ね下さい。



質問 質問者:女性 70歳 透析歴 今年の3月から腹膜透析

腹膜透析をおこなってます。
現在は1日4回の交換(1回1500cc注入)をしてますが、かなり時間がかかり、バック交換に2時間程かかってます。
(入院中からそうでした)また、左手と両足(特に左足)のむくみがひどく、パンパンに張って、痛くて立ったり座ったりが困難な状態です。(入院中からむくみはありましたが、退院後一層ひどくなりました。)
血圧も高いようです。
排液がしやすいようにベッドの高さを70cmほどにしてあります。が、効果はありません。
このままで良いのか心配です。


回答 回答者:長寿クリニック 大野卓志先生

ご質問有難うございます。

腹膜透析を開始されてから約2か月が経過しているのに、注排液にかなり時間がかかっていることと、むくみがひどく血圧も上昇していて心配されているのですね。
まず、バック交換に2時間かかるというのは、1回の交換に要する時間のことで手技的なものではなく注排液に費やす時間と理解させていただきます。
注排液不良の原因としては、
@ フィブリンや大網、血塊などによるカテーテルの閉塞
A お腹の中でのカテーテルの位置異常でカテーテルの先端が骨盤腔に正しく留置されていない。
B カテーテルの側孔を大網が覆っている。
C 便秘のため腸管がふくれて透析液がカテーテルを通過するのを妨げる。
D 塩分の過剰摂取、低蛋白血症、腹膜機能の低下
   などが考えられます。

ゆっくりでも注排液ができているので@ではありませんし、Dであれば時間的なことより、排液量自体が減少しているはずなのでDも否定できます。
ABCはいずれも可能性があります。Aは腹部単純レントゲンでカテーテルの位置を確認できます。Bなら注液の時にバックを手で加圧してカテーテルを覆っている大網をカテーテルから離せないか試してみる方法があります。Cなら便通をよくすること。以上で効果がない場合、再手術も検討が必要だと思います。

次にむくみがひどく、血圧も上昇しているようですが、塩分の摂りすぎや蛋白質の不足、あるいは、睡眠不足やストレスでもこれらの症状が出現することもあるのですが、体重が徐々に増加しているとか、心臓も大きくなっているようでしたら飲水量を減らしたり、透析液の濃度を濃いものに変更するなどの工夫が必要になると思われます。

患者様の状態は主治医の先生が一番理解されていますので主治医の先生に納得のいくように相談してみて下さい。




質問 質問者:女性 57歳

腹膜透析導入後、1か月が経ちます。横隔膜交通症のようですが、治療方法を具体的に教えてください。
導入後は急性胸水貯留になることは多いのでしょうか。
例えば、しばらく中断した場合どれくらいの割合で、自然に治癒するのでしょうか。
また、胸膜癒着術を施行した場合は成功率はどれくらいなのでしょうか。


回答 回答者:長寿クリニック 大野卓志先生

ご質問有難うございます。

横隔膜交通症はご存知のように横隔膜に「小さな孔」が開いているために腹腔と胸腔が交通し、腹腔内の透析液が胸腔に移行して胸水貯留をきたす疾患です。
治療法としましては、@CAPDの一定期間中断と血液透析の施行。A薬剤(テトラサイクリン、タルクなど)や自己血による胸膜癒着術の施行。B外科的処置の施行があります。
@ に関しましては自然治癒の報告例はありますが、中止期間について一定の見解はありません。
A に関しましては薬剤の種類にかかわらず、成功率は50から60%であるという報告があります。
B に関しましては確実な効果が期待できますが、侵襲性の問題で治療法としての優先順位は低いようです。
私の知る限り、統計学的な検討は18年前の論文しかありません。その論文によりますと横隔膜交通症はCAPD患者の1.6%に認められ、その約50%は血液透析に移行しているとありました。
欠損孔のサイズにもよるのかもしれませんが、治療に対する反応は個人差があると思われますので、主治医の先生によく相談してみて下さい。



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